「離婚」と一口に言っても、そこには様々な原因や理由があるものです。離婚をしたいと思っていても、相手が合意してくれなかったり、条件に不安があったり、理由があって離婚に踏み切れないという方も多いのではないのでしょうか。 もし、あなたが離婚を決意したとしたら、どのような条件で、どのような方法を用いて離婚を進めていくのか自分自身で選択していかなくてはなりません。その選択によっては、自分に有利なように離婚を進めていくことも可能ですし、逆に不利に事が進んでしまうこともあります。
そこで、今回は「協議離婚」、「調停離婚」、「裁判離婚」を中心に、離婚の検討から成立までの一連の流れを順番に見ていきます。
・協議離婚
「協議離婚」とは、夫婦同士の話し合いによる離婚のことをいい、夫婦間で離婚への合意が一定程度ある場合に行なわれる最も一般的な離婚の方法です。裁判を介さず二人で行なうものなので、「法定離婚原因」という民法770条で定められた離婚の理由となるものが必要ありません。お互いに相手の言い分や条件をしっかり聞いたうえで合意に至れば、離婚届を本籍地または住所地の役所に提出して、受理されれば離婚を成立させることができます。
ただし、離婚をする前には「親権」や「養育費」、「慰謝料」などについてあらかじめ決めておく必要があります。これらを取り決めておかないと、離婚後にトラブルが発生したり、思っていたような離婚と違う条件での離婚が成立してしまう可能性があります。また、取り決めておく事項のなかでも、「財産分与請求」や「慰謝料請求」など時効が存在するものについては、離婚を成立させる前にしっかりと取り決めておくことが大切です。
離婚をする前に取り決めるべき問題は主に以下のものになります。
・財産分与
・養育費
・慰謝料
・親権者・監護者
・面接交渉
・婚姻費用
口約束でこれらの条件を決める方もいますが、口約束のみで上記のような離婚の条件を決めた場合には、離婚後に慰謝料や養育費の未払いなどといった問題が起こる可能性が十分にあります。そのため、協議内容は高い証明能力のある「公正証書」として作成し、起こりうるトラブルに事前に備えておくことをおすすめします。
・調停離婚
「調停離婚」とは、協議離婚では話がまとまらない場合に、家庭裁判所に離婚調停の申立てを行なって離婚を成立させる離婚の方法です。調停委員といわれる第三者が夫婦の間に入り、夫婦間の悩みに合わせて適切な離婚の条件などを提示し、それに夫婦が合意した場合に調停離婚が成立します。こちらも協議離婚と同じく裁判による離婚ではないため、民法で定められた離婚の理由となる「法定離婚原因」は問われませんが、裁判と同じく双方の主張やその根拠となる証拠をもとに調停委員が判断を下すため、しっかりとした根拠に基づいた離婚の主張が必要となります。また、裁判離婚と異なり、調停離婚の成立には双方の合意が必要となります。調停離婚に双方が納得したら、調停離婚成立から10日以内に市役所に離婚届を提出し、離婚が完了します。
調停離婚に夫婦のどちらかが納得できない場合には、多くの場合、裁判離婚へともつれこみます。
・裁判離婚
「裁判離婚」とは、前述した調停を経て、お互いの合意が取れなかった場合に行なわれる裁判による離婚の方法です。民法では、離婚裁判を行なう前に離婚調停を行なわなければならないという「調停前置主義」が定められており、裁判離婚を最初から希望している場合でも、まずは調停からはじめる必要があります。調停を行なったうえで離婚が不成立だった場合には裁判離婚を検討することになりますが、裁判離婚を行なう場合には、家庭裁判所に訴状を提出して訴えを提起することが最初の段階となります。その後、訴えが認められると第一回口頭弁論が行われ、離婚裁判が開始されます。
協議離婚や調停離婚においても離婚に至る証拠は主張を通すために重要な役割を果たしますが、裁判離婚においても離婚に至る証拠は重要な役割を果たします。
裁判において有効な証拠の例としては次のようなものが挙げられます。
・日記(改ざんの可能性が少なく、長期的なもの)
・録音テープ
・電子メール・SNSの記録
・医師の診断書
・写真、動画
・第三者の証言
こうした証拠は裁判を有利に運ぶために必要不可欠なものといえます。離婚を検討している場合には、早いうちに上記のようなものを証拠として保存しておきましょう。
お互いが提出した証拠を踏まえたうえで、裁判官が判断を下すまで裁判は続きます。ただし、裁判の途中で裁判官から提案される和解を受け入れれば、互いが譲歩する形での離婚が成立します。よって、なるべく早く裁判を終わらせたいのであれば、和解を受け入れるというのも一つの手です。
・まとめ
離婚は多くの人にとって人生の分岐点となる大きな出来事です。円満に成立するものから様々な問題を持って争いに発展するものまで実に多種多様で、そう簡単に処理できる問題ではありません。「離婚をしたくても問題や不安があってできない」、「相手から提示された条件に不安がある上で離婚をする」などということはできるだけ避けるべき事態です。
離婚を決意したからには、これから歩む人生をより良くするためにも、お互いに納得した状態で離婚することを目指すことが大切です。