この記事でわかること
- ・自己破産とはどのようなものでどういった種類があるかわかる
- ・自己破産の手続きの流れについて詳しく知ることができる
- ・自己破産の手続きに必要な費用や払えない場合の対処法がわかる
ほとんどの人が自己破産という言葉を聞いたことがあると思います。
しかし、実際に自己破産自体がどのような手続きなのかを知っている人は少ないのではないでしょうか。
そのため、自己破産をしようかと真剣に考えている人も、いざという時に何をしたらいのかわからない状態となってしまうのです。
ここでは、自己破産がどのような手続きで、どのような流れで進められていくのかを解説します。
また、自己破産をする時にかかる費用や、その費用が払えない場合の対処方法についても説明していきます。
自己破産とは
自己破産とは、借金をしている人がその借金の返済をすることができなくなった場合に行う、法的な手続きのことです。
借金を返せなくなった人が、自分の持っている財産を債権者に提供する代わりに、借金を免除してもらいます。
自己破産のメリット
自己破産することで、多額の借金を抱えている人でも、そのすべての借金がゼロとなる可能性があります。
自己破産する際には何百万円、あるいは何千万円という借金があっても、その借金を帳消しにすることができるのです。
金融機関や消費者金融、個人といった債権者の種類に関係なく、すべての借金が対象となります。
また、自己破産を申請する人の職業などに制約はありません。
自己破産する時点で無職である場合、あるいは無収入である場合にも、問題なく自己破産することができるのです。
ただ、自己破産すると一時的に活動できなくなる職業があるため、注意が必要です。
自己破産すると、すべての財産がとられて、身ぐるみはがされるといったイメージを持っている人がいるかもしれません。
しかし、実際には生活のために最低限必要な財産については、回収することが禁止されています。
自己破産する人についても、最低限の生活は保障されているということがいえるのです。
また、自己破産の手続きを終えた後に獲得した財産については、債権者による回収の対象になりません。
すべての借金を返済できなかったからといって、後々までその返済の責任を負う必要はないのです。
自己破産のデメリット
自己破産をすると、自宅や車といった財産を残すことは原則としてできません。
不動産のほか、20万円以上の価値がある財産については回収の対象となるためです。
また、借金の保証人となっていた人がいる場合、自己破産することでその保証人にも返済請求が及ぶようになります。
保証人が返済できない場合には、保証人も自己破産する必要が出てくるといった影響が及ぶ可能性があるのです。
自己破産することで、一時的に職業や資格の制限を受ける人がいます。
自己破産の手続きを行っている間だけではありますが、その制限によって収入が減るなどの影響が出る場合があります。
また、自己破産しても税金などの公的な支払いは免除されません。
自己破産後も月々分割払いなどして、支払いを続ける必要があるのです。
養育費などの扶養義務に関する支払い、賠償金などの支払いについても免除されません。
自己破産したからといって、すべての支払いから逃れることができるわけではないのです。
自己破産すると、その後一定期間にわたってクレジットカードを作ることができなくなります。
また、ローンを組むこともしばらくできなくなります。
最低でも5年程度、長い場合は10年ほどクレジットカードやローンの利用に関しては制限されることとなります。
自己破産には2種類ある
自己破産と一口にいっても、その内容は法的に2つの種類に分かれます。
1つは同時廃止事件、もう1つは管財事件です。
この2つのいずれになるのかは、おもに2つのポイントによって判断されます。
1つ目は破産者に20万円以上の価値がある財産など、一定の財産があるかどうかです。
2つ目は免責不許可事由があるかどうかです。
この2つの手続きの違いや、2つのポイントの内容について詳しく解説していきます。
同時廃止事件とは
同時破産事件とは、自己破産の申立をした人に一定の財産がなく、かつ免責不許可事由がない場合に行われる手続きの種類です。
一定の財産とはどれくらいの財産をいうのかについては、裁判所によっても若干の違いがあります。
ただ、多くの裁判所では、20万円以上の価値がある財産を持っている場合には、一定の財産を保有しているものとされます。
逆に、20万円以上の価値がある財産を保有していない場合には、一定の財産がないと見なされます。
また、免責不許可事由とは、自己破産による免責がみとめられない事情があることをいいます。
本来、自己破産が認められるのはやむを得ない理由で借金をし、その返済に行き詰まった人であると考えられています。
しかし、現実にはそのような理由で借金をした人ばかりではありません。
ギャンブルや浪費のために借金をした人もいるでしょうし、自己破産する前提で借金してしまう人もいます。
そこで、ギャンブルや浪費などを理由として自己破産を行う場合には、免責が認められないことがあります。
同じような事由であっても、裁判官の判断によって免責が認められることもあるため、手続きが異なるのです。
一定の財産がなく、免責不許可事由もない場合には、売却してお金に換えることのできる財産はほとんどありません。
そのため、自己破産の手続きは簡潔に済みます。
手続きが異なるだけでなく、その手続きに要する時間もかなり短くなっています。
通常、弁護士に自己破産を依頼してから免責が決定するまで3か月程度とされています。
時間が多少かかるような場合でも、4か月から半年程度で完結することがほとんどです。
管財事件とは
同時廃止事件とならなかった場合には、自己破産はすべて管財事件として取り扱われます。
つまり、ある程度の財産を有している場合や免責不許可事由に該当する場合です。
財産の目安としては、20万円以上の価値のあるものを有している場合には管財事件となります。
管財事件となる場合、さらに「少額管財」と「通常管財」とに分かれます。
少額管財とは、自己破産の手続きを迅速に行い、破産管財人に選任された弁護士の負担を軽減する手続きをいいます。
その分、破産管財人に対する報酬の額が少額になることから、少額管財と呼ばれるのです。
少額管財となる場合には、破産手続きが迅速に完了し、破産者の金銭的な負担が少なく済むという特徴があります。
現在は管財事件となる事件のほとんどが少額管財として取り扱われます。
一方、通常管財とは文字どおり本来の管財事件として、費用や期間について簡素化されていない手続きをいいます。
破産手続きを行う人の負担が、少額管財より大きくなります。
また、少額管財より所要時間もかかります。
大規模な法人の破産や債権者の人数が多い場合、特に債権者との紛争が想定される場合には、手続きを簡略化することはできません。
そのため、現在でも少額管財ではなく通常管財として手続きが進められます。
自己破産の方法を流れと共に解説
それでは、実際に自己破産をすると決めた場合には、どのような手続きから始めればいいのでしょうか。
その流れを順番に確認するとともに、あらかじめ準備すべきものについて確認しておきます。
自己破産の手続きの流れ(1)弁護士に相談する
自己破産の手続きを確実に行うためには、弁護士に依頼すべきです。
自己破産の手続きを自分自身で行うことも不可能ではありませんが、それによって得られるメリットはほぼないからです。
自己破産を考える人の中には、弁護士への費用を節約するために自分で破産の申立を行うことを検討する人もいます。
しかし、弁護士に依頼せずに自己破産を行う場合、その破産手続きは同時廃止事件あるいは管財事件のうち、通常管財として処理されます。
弁護士に依頼した場合に利用できる少額管財は、破産者が自分で行う場合には利用できないのです。
まったく財産がない場合であればいいのですが、そうでない場合には必ず通常管財となり、裁判所に支払う費用は多くなります。
そのため、弁護士に依頼して少額管財となった場合のトータルの負担と、結果的にはほぼ変わらないケースもあります。
だとすれば、確実に手続きを完結することができ、時間的にも早く済むように、弁護士に依頼すべきといえるのです。
また、弁護士に現在の状況を相談した場合に、自己破産以外の解決方法をアドバイスしてもらえることもあります。
そのため、まずは現在の借金の状況や給与明細、預金通帳などの収入のわかる資料を準備して相談してみましょう。
実際にどれだけの借金が残っているか把握していない場合には、どの金融業者から借りているのかだけでもわかるようにしておきます。
そのうえで、自己破産すべきという結論に至った場合には、自己破産を行うために必要な契約を締結します。
なお、契約を締結した段階で着手金の支払いが発生しますが、一度に払えない場合には分割払いできることもあります。
また、そのような弁護士を探して契約をする場合もあります、
自己破産の手続きの流れ(2)受任通知の送付
正式に依頼を受けた弁護士は、そのことを債権者に知らせる必要があります。
この時に作成される書類のことを「受任通知」といいます。
受任通知を受け取った債権者は、それ以後に債務者に対して債権の取立てや回収を行うことができなくなります。
また、債権者から債務者本人に連絡を取ることもできなくなり、必要な場合には弁護士に連絡をすることとなります。
つまり、債権者からの激しい取立てに悩まされていた場合も、この段階ですべてストップするのです。
自己破産の手続きの流れ(3)必要な書類の作成・取得
受任通知の送付により債権者からの返済はストップしますが、まだ借金は残ったままです。
そこで、裁判所に対して自己破産を申立てるために必要な書類を準備する必要があります。
自己破産の申立に必要な書類は以下のとおりです。
・破産手続開始・免責許可申立書
裁判所ごとにその名称や形式が異なりますが、実際には弁護士に準備してもらうこととなります。
・陳述書
こちらも各裁判所に用意されています。
自己破産に至った経緯や、今後の方針などについて記載する書面です。
・住民票・戸籍謄本
家族関係を説明する必要がある場合には、家族関係を証明する戸籍謄本が必要となります。
実際には、その事案ごとに異なるため、必要に応じて準備することとなります。
・収入が分かる資料
直近2~3か月分の給与明細のコピーを提出します。
給与明細がない場合には、通帳のコピーなど金額のわかるものを用意して、収入状況を説明します。
・財産の分かる資料
預金通帳のコピーを2年分ほどコピーして提出します。
期間の途中での漏れがないこと、一括記帳のように明細がわからない箇所がないことを確認しておきましょう。
もし一括記帳となっている箇所がある場合には、別にその明細を準備しておく必要があります。
・所得金額のわかる資料
源泉徴収票がある場合は、源泉徴収票を用いるのが一番簡単です。
ただ、源泉徴収票を紛失してしまい、会社に再発行を頼むのが難しい場合には、市区町村役場で課税明細書を取得します。
・居住地が分かる資料
持ち家の場合は土地・建物の登記事項証明書を提出します。
また、自宅が親名義の家である場合には、居住証明書を作成し提出します。
一方、賃貸アパートなどに住んでいる場合には、賃貸借契約書のコピーを提出します。
・その他の資産のわかる資料
会社から退職金が支給される人は、その時点で退職したらいくら支給されるかを記載した退職金見込額証明書を提出します。
また、自動車を保有している場合には、車検証やその自動車の査定書を提出します。
さらに積立型の保険に加入している場合には、その時点での解約返戻金がわかる資料を提出しなければなりません。
・その他の資料
生活保護を受給している人は、生活保護受給証明書を提出します。
また、病気を患っている人は、病院の診断書などを準備しておく必要があります。
その他にも自己破産に至った個別の事情がある場合には、そのことを説明できる書類を提出しなければなりません。
自己破産の手続きの流れ(4)自己破産手続きの申立と債務者審尋
弁護士に申立書などの書類を作成してもらい、自分で準備すべき書類が全部そろったら、裁判所に自己破産の申立を行います。
実際に申立を行うのは、本人に代わって弁護士というケースも多いと思います。
自己破産の申立を行うと、後日裁判所からの呼び出しがあり、裁判官から申立の事情について質問を受ける必要があります。
このことを「破産審尋」といいます。
どうして借金をしたのか、あるいはどうして返済に行き詰まったのかを聞かれることとなるため、提出した書類の内容に従って説明を行います。
自己破産の手続きの流れ(5)破産手続開始決定
裁判所で破産審尋が行われると、その内容もふまえて裁判所から破産手続開始決定が通知されます。
これにより、自己破産を申立てていた人は正式に破産者となり、官報公告が行われます。
またこの時、自己破産の手続きが同時廃止事件となるか、あるいは管財事件となるかが正式に決定されます。
自己破産の手続きの流れ(6)免責審尋
破産手続開始決定が通知されたら、裁判所から再び呼び出され、裁判官との面談を行うこととなります。
これを「免責尋問」といいます。
免責尋問で裁判官から聞かれる内容は、ほとんど形式的な内容ばかりで、特別難しい内容ではありません。
ただ、弁護士も一緒に同席して行われるため、わからないことがあれば弁護士に確認することができます。
自己破産の手続きの流れ(7)免責許可の決定
免責審尋から2週間ほどで、免責許可の決定が行われます。
これにより、すべての借金について免責され、返済の必要がなくなります。
免責許可の決定から2週間ほどで、再び破産に関する情報が官報に掲載されます。
本来は、業務上必要のある金融業者や不動産業者など一部の人が目にする書類ですが、一般の人も入手可能となっています。
なお、手続きの途中の段階で虚偽の説明をしていた場合や財産を隠していたことが発覚した場合、免責が許可されないこともあります。
自己破産の手続きは適切に、真摯な気持ちで行う必要があるのです。
自己破産の費用が払えないときの対処法
ここまで、自己破産に関する手続きの流れを見てきました。
自己破産を行うためには、専門家に依頼する必要があるということがおわかりいただけたと思います。
しかし、弁護士に依頼した場合には、着手金・成功報酬を合わせて20万~50万円ほどの費用がかかります。
自己破産しようとするほどお金がない状態ですから、その費用が払えない場合にはどうしたらいいのでしょうか。
法テラスを利用する
法テラスとは、日本司法支援センターという法務省所管の公的な機関です。
経済的な理由で弁護士などの専門家に相談ができない人も、情報やサービスの提供が受けられるようにするために設立されました。
法テラスを利用すると、通常の弁護士費用より費用が安くなる可能性が高くなります。
また、弁護士費用の立替制度があるため、すぐに弁護士報酬が支払えない場合にも、弁護士に自己破産の手続きを依頼することができます。
さらに、要件にあてはまる場合には一部の費用が減免される制度もあり、金銭的に苦しい人にとっては大きな味方となります。
分割払いができる弁護士を探す
弁護士に対する報酬の額が決められていないのと同様に、その支払方法や期限も弁護士によってまちまちです。
そこで、弁護士費用を分割で支払うことができる弁護士を探します。
自己破産や債務整理を中心に取り扱っている弁護士であれば、依頼者の経済状況に合わせて柔軟な対応をしてくれる人が多いのです。
なお、勘違いしてはいけないのは、弁護士費用については分割払いできても、裁判所に対する費用は分割払いできないことです。
分割払いが認められるからということで安心せず、裁判所に納める費用については別に確保しておきましょう。
司法書士に依頼する
一般的に、弁護士より司法書士に依頼する方が、自己破産にかかる費用が安く済みます。
そのため、自己破産に関する手続きを司法書士に依頼する人もいます。
しかし、自己破産に関する手続きの中には司法書士では対応できない業務があり、その部分は自分で行う必要があります。
また、管財事件となるような場合について、司法書士に依頼した場合はすべて通常管財となってしまいます。
そのため、手続き面での負担が増え、さらにトータルの費用負担も増える場合があります。
結果的に、司法書士に依頼してもそれほどメリットはないということもあるので注意が必要です。
自分で自己破産の手続きを行う
自分で自己破産の手続きを完結することができれば、弁護士費用がかからないため大きなメリットがあるように思えます。
しかし、債権者との交渉をすべて自分で行い、必要書類も自分で作成する必要があります。
また、最終的に免責が認められない可能性が高くなってしまうほか、自己破産の手続きを行っている間も返済はストップしません。
このような内容を考えると、弁護士に対する費用負担は軽くなっても、自身の金銭的・精神的負担はかなり大きくなってしまいます。
自分で自己破産の手続きを行うのは、決しておすすめできるものではありません。
まとめ
自己破産しようかと考え始めた時には、すでにかなり借金の返済に行き詰まった状況となっていることも少なくありません。
そのような状況で、弁護士に高い報酬を支払って自己破産するのは難しいと考えるのは自然なことといえます。
しかし、弁護士に相談すれば、自己破産した方がいいのか他の方法があるのか、あるいはどのように費用を支払えばいいのかといった悩みにも答えてくれます。
借金の返済に苦しみながら問題を先送りにするのではなく、できるだけ早く弁護士に相談するようにしましょう。
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