この記事でわかること
- ・自己破産をしても基本的に勤務先に知られないことがわかる
- ・自己破産が会社に知られてしまうケースがあることがわかる
- ・自己破産が会社に知られてもそれを理由に解雇されることはない
自己破産は裁判所で行う手続きです。
そのため、自己破産すると勤務先の会社に知られてしまうのではないかと心配になるかもしれません。
はたして、自己破産したことは会社に知られてしまうのでしょうか。
また、仮に自己破産したことが会社にバレたときには、それを理由として解雇されてしまうのでしょうか。
働く人が自己破産する場合の不安について、解説していきます。
自己破産とは
自己破産とは、個人が借入金などの債務の返済ができなくなった場合に、その債務の免除を受けることです。
住宅ローンの返済ができなくなった場合、消費者金融からの借入が返せなくなった場合などが該当します。
借入金などの返済ができなくなったとしても、債権者からの請求が止まることはありません。
また、夜逃げなどをしても、法的にその債務が消滅することはありません。
債務の支払いが難しい場合には、法的な手続きを踏んで、その債務を免除してもらう必要があるのです。
自己破産の流れ(1)同時廃止の場合
自己破産をする人が高額な財産を保有していない場合に行われる手続きです。
具体的には現金が33万以上ない、20万円以上の資産を有していない、そして破産管財人が免責について調査をする必要がない場合に利用できます。
破産手続きの開始と同時に破産手続きが終了するため、簡単に免責の手続きが終了します。
自己破産をしようとする人は、まず弁護士に相談のうえ正式に依頼をします。
すると、弁護士から貸金業者などの債権者に対して受任通知が発送されます。
この段階で債権者からの取り立ては法的に禁止され、依頼者に直接連絡を取ることもできなくなります。
次に、貸金業者から開示された取引履歴をもとに、法定金利に引き直し計算を行います。
過払となっていた利息がある場合には、その返還請求を行います。
その後、書類の作成を行い、必要書類をそろえた後に、裁判所に申立を行います。
申立を行ったその日に裁判官と面接を行い、その日の夕方に破産手続開始決定・同時廃止決定が裁判所から出されます。
この時、免責審尋が行われる日が決定します。
裁判官との面接を行う免責審尋が行われると、1週間ほどで裁判所から免責許可決定が弁護士に送付されます。
その後、1か月を免責許可決定が法的に確定します。
自己破産の流れ(2)少額管財の場合
破産手続きを行おうとする人が33万円以上の現金や20万円以上の資産を保有する場合、あるいは破産手続きを行うことに納得していない個人の債権者がいる場合などは、少額管財として破産手続きを行います。
少額管財となる場合も、同時廃止の時と同じように弁護士からの受任通知の発送、過払い金の返還請求、裁判所への申立の順に手続きを進めます。
少額管財の場合は破産管財人が選任される点が、同時廃止との大きな違いです。
裁判所から破産手続開始決定が出されると同時に破産管財人が決定するため、破産管財人との面接を行います。
その後、裁判所への申立から3~4か月後を目安に裁判所で債権者集会が行われます。
債権者集会から1週間ほどで裁判所から免責許可決定が弁護士に送付され、1か月経過後に免責許可決定が法的に確定します。
自己破産をしても会社にはバレない
先ほど自己破産のおおまかな流れを見ていただきましたが、いずれの場合も裁判所での手続きが必要となります。
裁判所での手続きが必要になるということで、勤務先の会社に知られてしまうのではないかと不安に思うかもしれません。
しかし、自己破産の申立を行い、その後の手続きを進めていっても債権者以外の誰かに知られることはありません。
裁判所への申立を行う際に実際に仕事についているのか、あるいはどのような会社で働いているかを記載する必要はありません。
また、裁判所から勤務先に連絡が入ることもありませんし、債権者から会社に連絡が入ることもありません。
自己破産を行うことが会社に知られるということは基本的にはないため、安心して自己破産の手続きを開始することができます。
ただし、次に解説する場合にあてはまると、自己破産の手続きを行っていることが会社に知られる可能性があります。
自己破産が会社に知られてしまうケース
自己破産したことが勤務先の会社にばれるのには、いくつかのパターンがあります。
どのような場合に会社に知られる可能性があるのでしょうか。
勤務先の会社から借り入れをしている
会社の貸付制度を利用して借り入れをしている場合、自己破産をするとそのことは確実に会社にバレます。
自己破産をすると、弁護士からすべての債権者に受任通知が送付されますし、その後裁判所からも自己破産の通知が届くためです。
債権者平等の原則という決まりがあり、すべての債権者は同等に取扱いを受けなければならないとされています。
自己破産がバレるのが嫌だからという理由で、会社だけ自己破産の手続きから外すことはできません。
また、自己破産すると決めたのに、会社の借り入れだけ先に返済することもできません。
債務を隠したり特定の債務だけ返済したりすると、最悪の場合免責を受けることができなくなってしまいます。
会社から借り入れをしている人が自己破産すると決めた場合は、会社にバレることは覚悟しておかなければなりません。
勤務先を通じての借り入れがある
会社の福利厚生制度の一環として、会社や労働組合があっせんする借入制度を利用している場合があります。
また、公務員の方が共済組合から借り入れをすることもあります。
このような借り入れを利用している人が自己破産をすると、そのことが会社に知られる可能性があります。
裁判所からの通知が、その借入金の窓口となっている会社や共済組合に送付されることが多いためです。
この場合も、会社から直接借り入れを行っている場合と同じように、債務を隠したり先に返済したりすることはできません。
退職金証明書を作成してもらう
退職金証明書とは、仮に今現在で退職した場合、いくらの退職金が支給されるかを記載した書類です。
通常は、勤務先の会社が作成し捺印のうえ、従業員に交付されるものです。
裁判所ごとに必要な書類が定められており、正社員として一定の年数以上の勤務がある場合、退職金証明書を裁判所に提出しなければなりません。
この場合、会社に退職金証明書を作成してもらう必要があり、この時に会社にバレてしまうのです。
というのは、会社に退職金証明書の発行を依頼する時に、どうして必要なのかを聞かれるためです。
この場合、金融機関から借り入れをするため、あるいは住宅ローンの借り換えをするためと説明します。
納得してもらえれば、それ以上追求されることはないと思います。
あるいは、退職金規程などを見ながら自分で退職金の計算を行うことも認められます。
こうすれば、会社に退職金証明書の作成を依頼する必要はないため、会社にバレずに済むのです。
官報公告に掲載されることでバレることはあるのか
自己破産の破産手続開始決定が出されると、その旨が官報に掲載されます。
官報公告が行われることで、勤務先の会社に自己破産したことが知られてしまうのではないかと心配する方もいることでしょう。
実際、官報は誰でも見ることができます。
政府の刊行物を扱っている販売所で購入できるほか、インターネットで閲覧することも可能となっています。
そのため、会社の人が目にする可能性もゼロではありません。
ただ、現実的に官報を見ている人がどれくらいいるかというと、極めて少数です。
インターネットで検索して官報を見ている人は、最初から目的があって見ている人ばかりといえます。
不動産業者や金融機関など特定の業種以外の人が何気なく官報を見ていて、会社の人を発見するという状況はまずありません。
官報公告から自己破産したことがバレることはないと考えていいでしょう。
自己破産すれば給与の差し押さえはない
自己破産すると、会社から支払われる給与が差し押さえられるのではないかと心配な人もいると思います。
間違えるといけないのは、自己破産したからといって給与が差し押さえられるわけではないということです。
それではどのような場合に給与の差し押さえが行われるのでしょうか。
それは、借入金の返済も行わず、自己破産も行っていない状態にある場合です。
このような状態で債権者が裁判を起こした時に、給与の差し押さえが認められる場合があるのです。
給与の差し押さえが行われてしまうと、借入金の返済を滞納していることが確実に知られてしまいます。
このような状況を避けるためには、債権者から差し押さえを受ける前に自己破産を行う必要があります。
自己破産を行えば、債権者が直接債務者の財産を差し押さえることはできなくなるためです。
自己破産が知られても解雇されることはない
会社に自己破産したことを知られることはないはずですが、それでも中には知られてしまうことがあります。
この場合、会社は従業員が自己破産したことを理由として解雇することができるのでしょうか。
それとも、自己破産を理由として解雇することはできないのでしょうか。
自己破産を理由について解雇することは法令違反
自己破産するということは、何らかの理由で金融機関や貸金業者から借金をし、その借金の返済ができなくなったことを意味します。
借金自体は決してマイナスなものではなく、住宅ローンや自動車ローンなと、多くの人が実際に利用しています。
ただ、その返済が滞った点では、計画性がないとかだらしないという評価を受ける可能性があります。
ただ、自己破産をした人について、会社としてどのような評価を行ったとしても、自己破産を理由に解雇することはできません。
もし、自己破産したことを理由に解雇した場合は不当解雇にあたります。
裁判所に解雇の取り消しを請求すれば、その解雇を取り消してもらうことができます。
仮に就業規則に自己破産を理由に解雇できるとする文言があったとしても、その就業規則が法令違反となります。
そのような就業規則があったとしても、その就業規則は無効であり、これを根拠に解雇することはできません。
自己破産のために業務に集中できない状況とならないように
自己破産をしても、それを理由に会社から解雇されることはありません。
ただし、自己破産をしなければならないために、会社の業務に集中できないような状態にならないように注意しなければなりません。
自己破産の手続きを行うために、無断で会社を欠勤するようなことがあってはいけません。
また、借金の返済や自己破産のことばかり考えて、業務に集中できないということも許される行為ではありません。
このような状態があまりにひどいと、自己破産をしたからではなく会社に迷惑をかけているという理由で解雇や懲戒の対象となる可能性があるので、注意しましょう。
自己破産することができない職業の場合は注意
自己破産をした場合に、一部の職業や資格については、その職務を行うことに制限が課されるものがあります。
制限を受けるおもな職業・資格としては、宅地建物取引業者、旅行業者、建設業者、警備業者、質屋、生命保険募集人、土地家屋調査士、弁護士、公認会計士、税理士等があります。
これらの職業・資格については、破産手続きの開始から免責が確定するまでの間、制限を受けることとなります。
一時的にせよ、それまでの業務に従事することができなくなるため、注意が必要です。
また、このような公的なものとは別に、企業内の経理部など金銭を取り扱う部署では、その担当から外される可能性もあります。
この場合、部署の異動や転勤、配置転換などが行われる可能性もあるため、注意しなければなりません。
まとめ
自己破産を行う際には、できれば誰にも知られたくないと考えることでしょう。
実際、自己破産の手続きを進めるうえでは、官報に名前が掲載され、あるいは会社に必要な書類を作成してもらう必要があります。
そのため、会社に知られる可能性はゼロではありません。
ただ、官報を毎回見ている人はほとんどいないため、実際に官報でバレることはほとんどないといえます。
また会社から発行してもらう書類について、作成の理由を報告する義務はないため、自己破産について知られる可能性は低いといえます。
また、万が一、会社に自己破産のことを知られても、そのことで会社を解雇されることはありません。
借金のため仕事に集中できないという状況から抜け出し、自己破産をすることで仕事に集中できる状況となるようにしましょう。
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