目次
この記事でわかること
- ・法テラスとは何かについて理解できる
- ・個人破産と法人破産の違いがわかる
- ・法人破産に法テラスが利用できるかがわかる
- ・法人破産で悩んだときの対処法などがわかる
法人破産を検討しているような場合、従業員への給与支払い日や手形が不渡りになりそうな日など、事業を停止せざるを得ない日が決まっているケースも多いです。
期日が決まっている場合、破産手続などを早期に行う必要があり、経営者自身だけで抱えることは難しくなります。
法人破産を検討する程、経営状況が悪化しているわけですから、当然会社にお金は潤沢にありません。破産手続きや依頼する弁護士にも費用がかかりますので、利用できるものがあれば利用したいというのが本音ではないでしょうか。
本記事では、法人破産にあたって「法テラス」を利用することができるのかについてケース別に解説していきたいと思います。
法テラスとは
法テラスとは、正式名称「日本司法支援センター」のことです。
公平な司法制度の利用を実現するために設立された、法務省所管の独立行政法人です。
法テラスは、法律問題を抱えていて、かつ現預金など、資産が少ない個人のために設立されました。
法テラスでは、個人の法律問題について無料で相談することができます。
また、適切な弁護士事務所や司法書士事務所につないでくれるほか、弁護士費用・司法書士費用の立替も行ってくれます。
しかし、一方では、法テラスから紹介される弁護士事務所・司法書士事務所は限られる、一定以下の資産でないと利用できないなどの課題もあります。
個人破産と法人破産の違い
次に、法人破産と個人破産の違いについて説明します。
個人破産
個人破産とは、支払不能状態になって初めて行う手続きのことです。
支払不能状態とは、例えば、個人が借りたお金が返せない、また個人再生や任意整理などの条件変更を行っても、支払うことができない状態などをさします。
この支払不能という状態には、具体的な基準はありません。
個人の資産、収入、債務の状況に判断されることになります。
個人破産の申立ては、以下の手順で進みます。
- (1)弁護士等が裁判所に破産手続きの代理申立てを行う
- (2)破産手続の開始を行い、その旨が官報に掲載される
- (3)資産がある場合、破産管財人が選定され、財産を換価し、債権者に分配します
- (4)破産手続終了後、免責許可の手続きが行われる
- (5)免責許可の決定
おおまかに、上記のような流れで進みますが、最後の免責許可の決定を受けて、はじめて借金が免責されます。
免責とは、借金を返す責任を免れるという意味で、借金がなくなることになります。
なお、借金は免責されますが、税金や社会保険料については免責されませんので、ご注意ください。
法人破産
法人破産とは、約束した支払日に、支払うことができず、さらにその先も支払いができないであろう状態(支払不能)であるか、または会社の財産をもってしても債務を完済できない状態(債務超過)となって、申立てを行う手続きのことです。
法人破産の場合、大まかには以下のように進みます。
- (1)弁護士に破産手続きの依頼をする
- (2)債権者への破産予定通知を弁護士名義で送る
- (3)従業員の解雇と賃貸物件の明け渡しを行う
- (4)弁護士が裁判所に破産手続きの代理申立てを行う
- (5)破産管財人が選定され、法人財産の換価が行われる
- (6)債権者集会が行われる(規模によっては1回で終わることもある)
- (7)手続きの終了
- (8)法人が消滅し、会社登記も閉鎖される
法人の場合は、借金が免責される訳ではありませんが、会社が消滅するため、事実上借金はなくなります。
また、原則として消滅しますので、法人に課せられた税金や社会保険料の支払い義務もなくなります。
会社破産した場合の法テラス利用は原則不可
法テラスは、個人の法律問題しか扱わない為、法人である会社の破産については、利用することはできません。
しかし、法人破産の際には、代表者が債務を連帯保証しているケースもあり、代表者個人の破産が必要な場合もあります。
そこで、代表者個人の破産に関してのみ、法テラスを利用することが考えられます。
しかし実際は、会社経営者が裁判所に自己破産を申立てると、会社も同時に破産させるよう説得を受けることが多いのが現状です。
代表者個人のみが自己破産を申立てる合理的理由が説明できない限り、難しいといえます。
また、弁護士事務所によっては、法テラスを利用せず、個人の破産についても立替払いなどを配慮してくれる場合もありますので、相談してみてください。
代表者の個人破産で法テラスを利用するときは
法人の代表者が、自身の個人破産について法テラスを利用することはお勧めできませんが、利用する際には、以下の点について、充分ご注意ください。
まず、法テラスは、法人破産に関して一切関与できないということを念頭に置いてください。
また、法人代表者が、法人破産よりも先に個人破産を行った場合、法人と代表者の委任関係も終了します。
ですから、個人破産を先に行った場合、代表者以外の取締役がいない場合は、法人の破産処理ができなくなることも想定されます。
なぜなら、代表者が個人の破産手続きを行うと、個人と会社の関係が切れることになってしまうからです。
そのため、破産手続きを行う場合は、法人破産と個人破産の順番を考慮して手続きを進める必要があります。
法人破産で悩んだ時の対処法
法人破産を選ぶべきか悩んだときは、以下のような点を判断基準に考えてみてはいかがでしょうか。
再生できる可能性はあるか
赤字になっていても、一時的なものなら経営努力によって、改善することも可能です。
まずは、会社が再生できる可能性があるのかどうか検討しましょう。
債務超過になってしまっているのかどうか、またそれがどの程度なのか、解消できる見込みがあるのか、ないのか。
債務超過になっていたとしても、事業内容に将来性がある場合は、事業再生手続きを利用することによって、企業を復活させることも可能です。
そのような場合には、法人破産させる必要はありません。
逆に、債務超過の程度が大きく、減額交渉できたとしても、支払いを続けていける可能性がない場合や、売上そのものが上がらず、債務の返済の可能性がない場合は、破産を選ぶしかありません。
守る価値はあるか
破産によって、会社は完全に消滅してしまいます。
会社の財産はもちろん、ブランドや信用といった見えない価値も失われます。
ですから、会社に守りたい資産やブランドなどの価値がある場合は、再建型の事業再生を検討しましょう。
債権者の同意
破産以外の手続きは、債権者の同意が必要になるものが多いです。
たとえば、民事再生でも、再生計画を認可してもらうためには、一定以上の債権者の同意が必要となります。
また、特別清算でも、債権者の同意がないとスムーズに手続きを進めることはできません。
ですから、結局、債権者の同意が得られないような状況の場合は、法人破産を選択するしか道がないということにもなります。
私的整理
法人破産は、裁判所を利用する法的整理にあたりますが、裁判所を利用せず、債権者と直接交渉を行う、私的整理を選択することもできます。
私的整理であれば、倒産手続きをしないので、関係者以外の取引先には、知られることなく取引を継続することも可能です。
そこで、債務超過の程度が大きくなく、債権者の数も多くない場合は、債権者との話し合いによって、解決を目指す私的整理を検討する余地はあります。
ただし、私的整理するためには、基本的に債権者全員の同意が必要ですので、同意の見込みがない場合は、法的整理を目指すしかありません。
代表者が連帯保証しているか
法人の代表者が法人の債務について連帯保証人となっている場合、法人が破産手続きを行うと、代表者の個人資産から支払わなければならないケースがあります。
個人保証している場合は、利用する手続を慎重に選択する必要があります。
ですから、連帯保証している場合は、代表者個人に対する影響についても考慮するようにしましょう。
まずは弁護士に相談
色々と判断基準を説明しましたが、結局のところ、法人破産すべきかどうかは、専門家である弁護士に相談するのが、最も効率的です。
弁護士費用や、予納金等、費用もかかりますので、資金繰りが行き詰ってしまう前に、早めに弁護士に相談できるようにしましょう。
まとめ
破産手続を行う場合、安価に手続きできそうな法テラスを利用できないかと考える方も多いかと思います。
しかし、法テラスは、個人の法律問題しか扱わない為、法人である会社の破産については、利用することはできません。
法人破産と合わせて、代表者個人の破産手続も行う必要がある場合、個人の部分に限り、法テラスを利用することは可能ではあります。
一方で、法人破産の手続きに関しては一切関与できませんので、法人破産の手続きを依頼する弁護士に、よく相談することが望ましいです。