この記事でわかること
- ・法人破産とは何かについて理解できる
- ・法人破産にかかる費用の概要がわかる
- ・費用の内訳や具体的な金額がわかる
- ・費用がないときの対処法がわかる
法人破産は、負債と資産を精算する手続きです。
この破産手続きを申立てるには、当然費用がかかってきます。
では、この費用にはいったいどのようなものが含まれるのでしょうか?
法人破産にかかる費用の概要について、また、具体的にどのくらいの金額がかかるのかを、例を挙げて説明します。
法人破産とは
法人破産とは、様々な理由から経営状況が悪化し、これ以上会社を継続的に経営していくことが難しいという場合に、法的に清算する手続きのことです。
清算手続きとは、債務超過や支払い不能状態となり、負債を支払えない状態になったときに、負債と資産を精算する手続きのことをいいます。
手持ちの資産を整理し、可能な限り負債を支払い清算します。
破産手続きは、裁判所に申立てます。
その後、裁判所から破産管財人が選任され、管財人が会社の財産を換価し、債権者に公平に配当する手続きを行います。
法人の場合、破産によって債務は免除されません。
ただし、その法人自体が消滅してしまうので、事実上債務が免除されるのと同じことになります。
法人破産にかかる費用の概要
会社を破産させるためには、少なからず費用が必要です。
以下に、法人破産の申立てに必要な費用について説明します。
費用は大きく分けて
- ・「裁判所に納める予納金」
- ・「申立てを依頼する弁護士への費用」
の2つです。
裁判所に納める予納金等
実費の金額の目安は、破産事件の規模や内容により大きく異なってきます。
ここでは、少額管財の場合の費用目安についてご説明します。
少額管財の場合の費用目安は
少額管財の場合の費用の目安は、予納金として原則20万円(東京地方裁判所を例として)。
官報公告費用やその他の費用で、約2万円かかります。
予納金とは
予納金とは、破産申立ての際に裁判所へ納める費用のことです。
裁判所は申立てを受けた破産事件の手続きを開始するとき、裁判所が該当破産事件に利害関係のない弁護士、つまり「破産管財人」を選定します。
支払った予納金はその破産管財人を選ぶ際や、報酬の最低額を確保するために使われます。
また、破産決定について「官報」に公告する必要があり、このために別途費用が必要となります。
少額管財と特定管財
以前の法人破産の予納金は、最低金額70万円でした。
現在でも、少額管財ではなく特定管財の事件となった場合は、負債額に応じて70万円から数百万円にのぼる場合があります。
ただ現在では、東京地方裁判所をはじめ多くの裁判所で、「少額管財手続き」が導入されています。
少額管財の事件となった場合は、特別な事情がない限り、予納金は20万円とされています。
少額管財となる目安
なお、裁判所が少額管財の事件として扱う判断の目安は一般的に下記のような場合です。
- ・弁護士の代理申立てである
- ・破産管財業務を行う上で、換価(現金化)すべき財産がない、もしくは少額である
- ・規模が小さく、破産管財業務が短期間で終了する見込みがある
- ・債権者が100名未満である
ただし、明確な基準が設けられているわけではありませんので、ご注意ください。
申立てを依頼する弁護士への費用
破産手続きを考え、手続きを弁護士へ依頼する場合の費用の目安です。
裁判所が選定する破産管財人とは異なりますので、ご注意ください。
弁護士費用の目安は
案件の規模により大きく変わってきますが、50万~150万円程度が一般的です。
規模は、前述の少額管財にあたるかどうか、また会社の従業員の人数、営業所の数、債権者の数、その他、代理手続きで必要な業務量が考慮されます。
弁護士費用は高い?
予納金として支払う費用と比較して、申立てを代理する弁護士の費用が高額だと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
予納金は、少額管財の導入によって、相当の低額化が図られていますが、前提条件として、弁護士が代理申立てすることが必要です。
少額管財の運用のためには、申立ての代理人弁護士が、適切かつスムーズな手続きが進められるように、資料の収集、事情聴取、現存財産の保存、財産処分の見通しをつけるなど、様々な活動を行うことが重要になってきます。
また、弁護士は申立て後も代理人として、裁判所や破産管財人に協力し、また依頼者のために必要な折衝も行います。
破産事件の規模にもよりますが、実際の業務を考慮し、費用については事前に確認を行うようにしましょう。
【具体例】破産申立に必要な費用の総額
破産申立ての費用について、概要と費用の目安について説明してきました。
ここでは、東京地方裁判所の少額管財手続きを、都内の弁護士に依頼した場合を具体例として説明します。
なお、弁護士費用は、事務所によって大きく異なりますので、あくまでも参考としてお考え下さい。
裁判所への破産費用
東京裁判所では、中小零細会社が法人破産する場合で、弁護士が申立て代理人についた場合、ほとんどが「少額管財手続き」となります。
他の裁判所については異なる場合もありますので、ご注意ください。
法人破産の裁判所費用
予納金(管財人報酬) | 200,000円 |
予納金(官報公告) | 14,786円 |
印紙・郵券 | 5,300円 |
合計 | 220,086円 |
小:代表者個人が同時に破産手続する場合の裁判所費用
予納金(官報公告) | 18,543円 |
印紙・郵券 | 5,700円 |
合計 | 24,243円 |
法人と代表者個人の自己破産を同時に申立てした場合の費用合計は、24万4,329円となります。
代表者個人の自己破産を同時に申し立てる場合でも、破産管財人の報酬費用である予納金20万円が別途必要になるわけではありません。
弁護士への破産費用
弁護士事務所によって、明細も異なりますが、着手金と実費という形で説明します。
着手金とは、法人破産や代表者の個人破産を代理申立てし、管理することに対する弁護士への報酬です。
また実費とは、弁護士が破産手続に際し、依頼者に代わって立て替えたもので、切手代や交通費、遠方の場合は宿泊費などが含まれます。
着手金
法人破産、代表者個人破産の手続き代理、進行管理についての弁護士への報酬です。
一般的に、この着手金は破産手続きの終了に関係なく、返金されません。
これは、理由もなく弁護士事務所の方から委任関係を終了させて、破産の手続きを途中で終わらせるということではありません。
依頼者自身が重要な事実を隠していたり、虚偽の報告をしたり、行方不明などによって委任関係を終了せざるを得ない場合は、着手金は返金されないという意味です。
着手金は、債権者と債務額によって変動します。
着手金早見表
| 債権額 | |||
債権者数 | 3千万円まで | 1億円まで | 2億円まで | 3億円以上 |
1~4社 | 500,000円 | 600,000円 | 800,000円 | 1,000,000円以上 |
5~14社 | 800,000円 | 900,000円 | 1,100,000円 | 1,300,000円以上 |
15~29社 | 1,100,000円 | 1,200,000円 | 1,400,000円 | 1,600,000円以上 |
30~49社 | 1,500,000円 | 1,600,000円 | 1,800,000円 | 2,000,000円以上 |
50社以上 | 2,000,000円以上 | 2,100,000円以上 | 2,400,000円以上 | 要相談 |
上記の着手金(弁護士への報酬額)には、消費税が含まれておりませんので、別途必要です。
また、既に営業休止状態で、債権者も債権額も少ない、かつ店舗や事務所の賃貸契約が終了し明け渡しが終わっている等、弁護士の業務量が特に少ないという特殊な場合は、個別交渉が可能です。
合わせて、代表者の個人破産も行う場合は、着手金は40万円です(消費税別途)。
実費
破産手続きのための経費で、切手代や弁護士の交通費、遠方の場合の宿泊費などです。
こちらは、着手金支払い日に裁判所費用と合わせて、弁護士へ預け金として支払うことが多いようです。特に遠方ではない場合は、端数の調整とされ、1万円前後となります。
シミュレーション
法人破産の規模が、「債権額1億円以下、債権者数が4社以下」の場合で、東京地方裁判所へ破産申立てを行うと仮定して、費用を算出してみましょう。
尚、依頼弁護士は東京都内で出張対応がない場合とします。
会社破産のみの申立て
裁判所費用 | 220,086円 |
実費(調整有) | 9,914円 |
弁護士費用(会社破産) | 660,000円 |
合計 | 890,000円 |
※弁護士費用には消費税が含まれています。
会社破産と代表者個人の同時申立て
裁判所費用 | 244,329円 |
実費(調整有) | 15,671円 |
弁護士費用(会社破産) | 660,000円 |
弁護士費用(個人破産) | 440,000円 |
合計 | 1,360,000円 |
※弁護士費用には消費税が含まれています。
法人破産費用が準備できない場合
資金繰りが苦しくて、経営状態が悪化し、破産を選択したのに、法人破産の費用なんて支払えないとお考えの方もいらっしゃると思います。
でも、必ずしも諦める必要はありません。
本来は資金繰りが行き詰まる前に
本来であれば、資金繰りが行き詰まってしまう前に、少しでも余裕が残っている状態で、弁護士へ相談をすることが重要です。
近いうちに行き詰まってしまうことが明らかとなった場合、単に延命するために無理な金策を繰り返してしまうと、代表者個人の財産も圧迫します。
そして、そのことで資金を使い果たしてしまうと、破産すらできなくなってしまいます。
経営者としては、債務が弁済できず、会社の立て直しもできない場合は、法的にきちんと清算し、債権者に対しても最低限の責任を果たす必要があります。
ですから、法人破産できる程度の資金が残っている状況で、弁護士に相談することは重要です。
費用が捻出できる可能性も
表面上、資金が尽きたように見えても、一時的に銀行借り入れの返済を停止するなどの措置によって資金の確保ができる場合があります。
また、入金予定の売掛金がある場合は、例え入金後に支払いの予定があったとしても、そこから破産費用を捻出し、入金日にそのまま引き出し、費用に充てるということもできます。
条件の合う弁護士事務所を探す
法人破産の裁判所費用は一律ですが、弁護士費用については、事務所によってかなり違います。
例えば、弁護士費用の支払いについて、分割に応じてくれる弁護士事務所などもあるようですので、条件の合う事務所を探すことも必要です。
また、弁護士に依頼する場合、法律相談が必要となります。
最近では法人破産の債務整理であっても、相談料を無料としている弁護士事務所もありますので、そういった事務所へ相談してみましょう。
病院、医師のセカンドオピニオンと同様に、一人の弁護士にしか相談できないわけではありませんので、いくつかの弁護士事務所をあたって、費用面や、破産手続きの方針など、自分に合った弁護士に依頼しましょう。
弁護士へ依頼せず自分で申立てできるか?
弁護士費用を節約して、すべて代表者自身が書類などを準備して申立てを行うことは可能です。
しかしながら、弁護士に依頼しない場合は法人破産の申立てにおいて、「少額管財」は適用されません。
少額管財でない場合、裁判所への予納金は、最低でも72万円程度必要となり、さらに負債額によっては、百数十万円となることもあります。
ですから、自分で申立てをすることによって、弁護士費用を節約できたとしても、トータルでの費用が節約できるかはわかりません。
しかも、多数の債権者からの連絡や要求に代表者自身が応えることとなり、精神的にも多大なるストレスを抱えることとなります。
また、破産手続きに慣れているという訳ではないでしょうから、書類の収集や申立書の作成などに膨大な時間を要します。
当然、通常であれば代理人の弁護士が対応してくれる債権者集会でも、対応を求められます。
さらに、法律上の問題において、知らずに違法行為を犯してしまう可能性もあります。
最悪の場合、代表者個人について免責を受けることができないという結果に陥ってしまうこともあるでしょう。
以上を、充分に考えたうえで、弁護士費用を節約することがトータルでメリットがあるのかを判断しましょう。
まとめ
法人破産とは、債務超過や、支払い不能状態となり、負債を支払えない状態になったときに、負債と資産を精算する手続きのことをいいます。
この破産手続きを申立てるには、大きく分けて2つの費用がかかります。
「裁判所に納める予納金」と「申立てを依頼する弁護士への費用」です。
裁判所に納める予納金は、ある程度一律ですが、申立てを依頼する弁護士費用については、弁護士事務所によって異なります。
本文では、目安として具体例も挙げましたので、参考にしていただき、自身の要望にあった弁護士へ依頼しましょう。
また資金繰りが行き詰ってしまう前に、弁護士に相談することが大切です。