「パワハラ」という言葉は「パワーハラスメント」を略した言葉で、近年、企業コンプライアンス上の問題として取り上げられることが増えてきました。
今まで被害者が泣き寝入りしていたようなことが、都道府県の労働局や労働基準監督署に相談されるようになっており、相談コーナーに寄せられるいじめ・嫌がらせに関する相談の割合は、2004年には10%弱であったのが2014年には26%を占めるまでになりました。
以前よりも社会全体でパワハラへの目が厳しくなったとはいえ、まだまだ多くの職場にパワハラが存在しています。
そこで、今回は職場で起きうるパワーハラスメントについて基本的な知識をみていきます。
目次
・パワーハラスメントの定義
パワハラの定義とは「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの”職場内での優位性”を背景に、”業務の適正な範囲”を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」とされています。
多くの方が誤解されているのが、”職場内の優位性”とは上司から部下へといった「職務上の地位」における優位性だけには限られていないということです。優位性には人間関係や専門知識、経験など様々な優位性も含まれているため、先輩・後輩間や同僚間はもちろん、部下から上司に対して行なわれるものもパワハラとなります。
2000年代から広まったパワハラという言葉にはそれまでの職場内いじめや嫌がらせをセクハラと同じように定義づけることで社会的に該当事案へ視線が集まりやすくなったり、企業としてもその予防策を作ることができるようになるなどのメリットがあります。
・6つに分類されるパワーハラスメントの種類
パワーハラスメントはおおまかに6つの種類に分類されています。
1、身体的な攻撃
殴る蹴るなど直接的な暴行の他、紙束や軽いもので叩く等
2、精神的な攻撃
同僚のいるところで叱責される、他の社員も見ているメールで罵倒される、長時間にわたり執拗に叱る等
3、人間関係からの切り離し
1人だけ別室に席をうつされる、強制的に自宅待機を命じられる、送別会等のイベントに出席させない等
4、過大な要求
新人や未経験にも関わらず、過大な量の業務を押し付けれられる、同僚は帰ってしまう等
5、過小な要求
営業なのに草むしりだけさせられるなどの業務上の合理性がなく、能力・経験から離れた程度の低い業務をさせる等
6、個の侵害
恋人や家族のような私的なことに過度に立ち入ること等
もちろんここまでの6つの分離に属していなくても、パワハラとされる事案はあるので注意しましょう。
・パワーハラスメントから起こりうるリスク
パワーハラスメントを行なうことで、会社や行なった本人に様々なリスクが生じます。
パワハラの被害者が裁判に訴え出た場合、加害者が法的に責任を問われるだけでなく、所属している会社も「使用者責任」や「安全配慮義務違反」を問われるといった法的リスクがあります。また、裁判を起こされマスコミやインターネットで取り上げられることによる評判リスクもあります。
評判リスクが起きると上場している場合には特に重要な株価に影響するだけでなく、BtoCのような一般消費者を相手にする事業をおこなっていた場合、不買運動につながることもあります。
また、パワーハラスメントにおける行為が刑法の規定に触れる場合、刑事罰が科されることもあります。具体的には傷害罪・名誉棄損罪・侮辱罪などの罪がパワハラにおいて問われることがあります。
当然ながら、パワーハラスメントが横行しているような会社では、社員のモチベーションは高まらず、抑圧的な雰囲気からミスの隠ぺいやコンプライアンス違反が起こる可能性も高まっていることが考えられます。
・まとめ
パワーハラスメントを行なうことで様々なリスクがあります。自分は関係ないことだと思っていても、同じ会社で起きているならば、会社へのダメージが起きるリスクがあるので、見過ごすべきではないでしょう。
解決に悩む場合や、パワハラなのか判断に困る場合は、労働局・労働基準監督署に相談したり、弁護士・社会保険労務士などの専門家に相談をし、早期の解決を図ることをおすすめします。