セクハラ、アルハラ、モラハラなど、近年、「ハラスメント」問題が急激に取り上げられるようになりました。
会社や学校、家庭内など様々な場所で起こるハラスメントの問題ですが、今回は「パワーハラスメント」、いわゆる「パワハラ」について取りあげます。
目次
・パワハラとは
「パワハラ」とは、職場内において、職務上の地位もしくは人間関係などの優位性を背景にして業務の適正とされる範囲を超えて精神的、身体的苦痛を与えること、もしくは職場環境を悪化させる行為を言います。
この「業務の適正な範囲」という言葉の定義が曖昧なために、「これってパワハラになるのだろうか」「ここまではパワハラではないから大丈夫だ」という認識が出てきてしまいます。
しかし、実際にパワハラの被害は深刻で、知らず知らずのうちに自分がパワハラ被害に遭っていたり、逆にパワハラの加害者になっていた、ということもありえます。
パワハラは一般に大きく分けて下記の6つに分かれると言われます。
①精神的侵害
②身体的侵害
③人間関係からの隔離
④過小な要求
⑤過大な要求
⑥個人への侵害
パワハラは精神的にも身体的にも職場の仲間を追い詰めてしまう恐ろしい行為です。このような被害が身近に起こることを未然に防ぐためにも、しっかりと対策を講じていくことが大切です。
・パワハラの実態調査
パワハラを防止するためには、まず初めに「社内でパワハラが起こっているか」について知る必要があります。
パワハラに関する匿名の社内アンケートの実施や個別面談などは対策としてとても有効なものです。個別面談をする場合には、内容を録音しておくことをおすすめします。
注意すべきことは、パワハラの相手やその周辺の人には相談を持ち込まないようにするということです。当事者間では話がまとまりにくく、解決が困難になってしまうこともあります。よって、このような調査においては「匿名性」と「遠隔的調査」、「公平性」が重要となります。
また、パワハラと取れるような疑わしい行為が発覚した場合は、本人たちだけでなく、周りの人たちへの周辺調査を行なう必要があります。この時に、担当者は、パワハラの被害者、加害者が周辺の人たちに露見しないよう注意を払いつつ調査することが重要です。ついやりがちなことですが、被害者の話を全て信じ込むのもよくありません。複数の人間の話を聞き、総括的に判断することが求められるということを忘れないようにしましょう。
・社内ルールの作成
前述のようにパワハラの定義は曖昧です。
パワハラを行なったとしても何も処罰がない、問題とされない会社であれば、「ちょっとやりすぎたかな」と思うことであっても続行してしまう可能性は大いにあります。明確な定義がないばかりに、知らないうちに加害者になってしまうなんてこともあるのです。そのような事態を防ぐためにも「パワハラに関する社内ルール」を決めておきましょう。
・罰則規定の適用条件や処分内容などを定める
・具体的かつ分かりやすいものであること
・禁止事項は広く具体的なものであること
・就業規則の一部であるという明示
・相談窓口などの設置と運用方法、守秘義務
これらの項目に注意し、説明会の開催や文書によって従業員全体への周知を完全に行ないましょう。また、パワハラの定義や何故禁止するのか、なぜこのような取り組みに至ったのかをしっかりと記載、説明すると効果的です。
・相談窓口の配置
パワハラは通常の業務上で起こることがほとんどであるため、対策のために通常とは別に相談窓口などの組織を置くことをおすすめします。
相談窓口の存在も社内ルール同様社員に周知するようにしましょう。電話・メールなど様々な方法でアクセスできるように工夫しておくことも必要です。
相談窓口は内部に置く場合、外部に置く場合、内部外部どちらともに置く場合があります。いずれの場合にせよ、匿名性の保持やプライバシーへの配慮を怠らず、公平な判断が行なえる組織であることが大切です。
なお、弁護士など法律事務所に相談窓口の設置を依頼すれば、適切な法的処置が期待できる上、秘密の保持、プライバシー配慮などまでしっかりと行なうことができます。
・社内への啓蒙活動
社内ルールや相談窓口の設置・運用の全社員への周知の重要性は先程述べたとおりです。内容自体がしっかりしていたとしても、存在が周知されていなければ意味がありません。とくに相談窓口の存在は従業員の最後の逃げ道です。忘れられないよう、しっかりと継続的にアピールしていかなくてはいけません。
このような機関・ルールを周知させると同時に、第一にパワハラなどのハラスメントの存在と、それらがどのような影響を及ぼすのか、次いで、社会的にどのような評価を受けているかをしっかりと説明しましょう。
ぼんやりとした概要だけでなく、具体的な話を交えたうえで、会社の代表など発言力のある人間からの喚起が大切です。「この取り組みは、安心して働ける会社を目指すためのものである」「会社は積極的にこの取り組みを行なう」「会社と社員のためのものである」という趣旨を伝えることが大切です。
・まとめ
パワハラの相談件数は少なくありません。気づいていないだけで、あなたの会社でもパワハラが起こっていたり、火種が隠されている可能性は多いに存在するのです。会社が対策を講じるだけではなく、従業員一人ひとりがパワハラに対して注意をもって行動することがパワハラ対策への大きな一歩となります。会社や従業員のためにも、しっかりとした対策をおこなっていきましょう。