目次
この記事でわかること
- ・交通事故の慰謝料が1日8,600円になるケースがわかる
- ・交通事故の慰謝料が1日8,600円になる場合の注意点がわかる
- ・交通事故の示談交渉の注意点を理解できる
交通事故の慰謝料で1日4,300円(4,200円)や8,600円(8,400円)という金額を見たことはありませんか?
交通事故の慰謝料について調べていると、頻出する金額です。
1日8,600円(8,400円)と4,300円(4,200円)では交通事故の慰謝料にかなりの差が出ますが、金額をわける基準は何なのでしょうか。
また、1日8,600円(8,400円)という金額は、一見して交通事故の被害者に有利な金額ですが、慰謝料として提示された際に注意すべきポイントはあるのでしょうか。
交通事故慰謝料の基準額や高い基準額を提示された場合の注意点、交通事故の示談交渉で被害者が注意したいポイントについてまとめました。
交通事故にあってこれから示談交渉に臨む方や交渉中の方は、ぜひ参考になさってください。
交通事故の1日の慰謝料基準は4,300円(旧基準4,200円)
交通事故の慰謝料算定には、3つの基準があります。
交通事故の慰謝料算定の3つの基準とは、「自賠責の基準」「任意保険の基準」「弁護士の基準」のことです。
まず、自賠責の基準とは、強制加入である自賠責の慰謝料算定基準になります。
自賠責の算定基準で算出される慰謝料はあくまで補償の最低限になり、一般的に3つの基準の中で最も慰謝料の金額が低くなります。
次に、任意保険の算定基準は、保険会社が慰謝料の算定に使う基準です。
保険会社各社で基準がやや異なっており、基本的に外部には算定の基準は教えてくれません。
任意保険の基準で計算する慰謝料の相場は、自賠責と同じくらいか、自賠責の基準で算出する慰謝料よりやや高い金額になります。
任意保険の基準は、加害者側の保険会社が交通事故の被害者に示談をもちかけるときに提示する金額の算出などに使われる基準です。
最後に、弁護士の基準で計算した慰謝料は、一般的に3つの基準の中で最も高額になります。
弁護士の基準とは、弁護士を雇って加害者側に慰謝料を請求するときに弁護士が使う算定基準のことです。
交通事故の1日の慰謝料基準4,300円(4,200円)や8,600円(8,400円)は、3つの基準の中の自賠責の基準で使われる金額になります。
自賠責の基準で慰謝料を算定するときに、1日あたりの金額を4,300円(4,200円)または8,600円(8,400円)として計算するのです。
最近まで、自賠責の基準で使われる1日の慰謝料基準額は、4,200円と8,400円が使われていました。
しかし、令和2年4月1日に4,300円と8,600円に金額が変更され、令和2年4月1日以降の交通事故には改正後の金額が使われています。
交通事故の日付によって計算に使う金額が異なるため、注意してください。
1日の慰謝料が8,600円(旧基準8,400円)になるケース
自賠責の基準には、2つの慰謝料基準額が用意されています。
慰謝料を受け取る側である被害者は、慰謝料が多ければそれだけ助かります。
4,300円(4,200円)と8,600円(8,400円)の2つの慰謝料基準額のうち、計算に使う金額を選べるなら、8,600円(8,400円)の方を選びたいと考えるのではないでしょうか。
自賠責の基準で計算に利用する2つの金額は、交通事故の被害者側が自由に選べるわけではありません。
慰謝料基準額が8,600円(8,400円)になるケースに該当した場合は、8,600円(8,400円)を使うことになっています。
自賠責の慰謝料基準額1日8,600円(8,400円)を使うのは「交通事故にあって2日に1回程度の通院があったケース」です。
2日に1回程度の通院でなぜ慰謝料基準額8,600円(8,400円)が使われるのかは、自賠責の基準を使った計算を見るとわかります。
自賠責の基準を使った慰謝料の計算方法
自賠責の基準では入院と通院をわけずに、1日4,300円(4,200円)か8,600円(8,400円)を使って計算します。
慰謝料の計算には次の式を用います。
- ・交通事故の怪我の治療期間×4,200円(4,300円)
- ・交通事故の怪我の実治療日数×2×4,200円(4,300円)
なお、上記ふたつの計算式のうち日数が少ない方を計算に使います。
下の方の計算式の「×2」と「金額」に注目してください。
4,200円と4,300円の2倍と考えると、ちょうど8,600円(8,400円)になります。
よって、交通事故の怪我の通院が2日に1回ほどの頻度の場合は8,600円(8,400円)という慰謝料の基準額を使うことになるのです。
本来の自賠責の基準での1日あたりの金額は4,300円(4,200円)ですが、通院の頻度が高い場合に8,600円(8,400円)が使われることがあるため、金額がよく知られるようになりました。
慰謝料8,600円(旧基準8,400円)の場合には注意が必要
慰謝料基準額を1日8,600円(8,400円)と提示されると、交通事故の被害者は「自分にとって有利な慰謝料が提示された」と考えることがあります。
額面だけ見れば確かに4,300円(4,200円)より8,600円(8,400円)の方が、被害者にとって有利な金額です。
しかし、8,600円(8,400円)という金額の提示は、交通事故の被害者にとってのメリットばかりではありません。
8,600円(8,400円)と提示されたら、注意したいポイントが4つあります。
払ってもらえる期間に注意が必要である
慰謝料1日8,600円(8,400円)を提示されても、慰謝料の支払い期間には定めがあるため注意が必要です。
交通事故の通院・入院慰謝料は、治療の終了や症状固定までの期間の精神的な苦痛に対して支払われる金銭になります。
交通事故の怪我の治療終了後や症状固定後に「怪我が痛む」「後遺症が残ってしまった」などの場合は、請求の対象外です。
治療後や症状固定後の後遺症については、後遺障害の慰謝料の対象になります。
治療後や症状固定後に通院しても、その分の慰謝料を1日8,600円(8,400円)換算で請求することはできませんので注意してください。
自賠責には120万円の上限額が設定されている
自賠責には、支払いの上限金額が定められています。
自賠責の上限金額は120万円です。
交通事故の怪我の慰謝料だけで120万円の上限ではなく、病院への交通費や休業損害などを合計して120万円が上限になっています。
交通事故の怪我による通院期間が長くなると、それだけ治療費もふくらみます。
自賠責の上限額以上の治療費になることもあるかもしれません。
治療期間が長引くと120万円ではおさまらず、マイナスになる可能性があります。
慰謝料1日8,600円(8,400円)で計算した金額が120万円を超える場合でも、上限額はあくまで120万円になりますので、この点は注意しておきましょう。
2日に1度を上回る通院頻度では注意が必要
慰謝料1日8,600円(8,400円)は一見すると交通事故の被害者側に有利な金額のように思えます。
しかし、あくまで通院頻度が2日に1回程度と高い場合に用いられる金額に過ぎません。
被害者側に配慮して、自賠責の基準で使われる本来の金額4,300円(4,200円)を引き上げているわけではないのです。
見た目の額面で判断しないよう注意しましょう。
また、注意したいのは額面だけでなく、日数についてもです。
2日に1度程度の頻度の通院で8,600円(8,400円)という金額が使われるということは、それ以上の頻度で通院・入院した場合は、金額的に妥当ではないということです。
2日に1回を上回る高頻度で通院したなどのケースでは、1日あたりの金額がかえって少なく見積もられていることになります。
通院頻度と慰謝料1日8,600円(8,400円)が釣り合うか。
慰謝料1日8,600円(8,400円)が妥当な金額であるか。
以上のポイントをしっかりとチェックするようにしましょう。
弁護士の基準などで計算した慰謝料とも比較する
慰謝料1日8,600円(8,400円)を提示されたときは、弁護士の基準で計算した慰謝料とも比較することをおすすめします。
自賠責の基準で算出する交通事故の慰謝料は、基本的に被害者への最低限の補償ラインです。
一般的に交通事故の慰謝料の算定額は、自賠責の基準、任意保険の基準、弁護士の基準の順に高くなります。
自賠責の基準で慰謝料1日8,600円(8,400円)で慰謝料を計算するより、弁護士に弁護士の基準で計算してもらった方が、慰謝料がより増える可能性が高いのです。
慰謝料1日8,600円(8,400円)という金額を提示されたら即決せず、弁護士にも相談することをおすすめします。
その上で弁護士から弁護士の基準で交通事故の慰謝料を計算してもらい、慰謝料1日8,600円(8,400円)で計算した慰謝料と比較して決めてはいかがでしょう。
慰謝料は日額よりも後遺障害等級に注目
交通事故の慰謝料は、日額よりも後遺障害の等級に注目することが重要です。
交通事故の怪我の治療の後に後遺障害が残ると、後遺障害の慰謝料を別途請求できます。
ただ、後遺障害が出たからといって即座に後遺障害の慰謝料を請求できるわけではなく、認定機関で後遺障害の認定を受けなければいけません。
後遺障害の慰謝料は後遺障害の等級によって変わってきます。
認定を受けた後遺障害の等級が高いほど、慰謝料が高額になる傾向にあります。
入院や通院の慰謝料である1日8,600円(8,400円)という金額だけに着目せず、後遺障害が残ったときは迅速に認定を受け、後遺障害の慰謝料請求の準備をすることが重要です。
なお、後遺障害の認定は申請したからといって、必ず受けることができるわけではありません。
後遺障害が残りそうな場合は、早めに弁護士へと相談し、後遺障害の等級に着目した慰謝料請求や認定申請の準備をはじめることをおすすめします。
交通事故後の示談(慰謝料請求)は焦らずに
交通事故で怪我をすると、加害者や加害者の保険会社から示談を持ちかけられることが少なくありません。
交通事故の怪我の慰謝料1日8,600円(8,400円)という金額を提示されると、示談を早くまとめたくなるかもしれません。
しかし、示談交渉において焦りは禁物です。
焦って話をまとめた結果、後悔に苛まれる可能性もあります。
交通事故の慰謝料で後悔しないためにも、示談交渉では次のポイントに注意する必要があります。
加害者の保険会社の言葉に納得しない
加害者側の保険会社が示談を持ちかけてきた場合、保険会社側の担当の言葉をすべて鵜呑みにすることはおすすめしません。
すでにお話ししましたが、交通事故の慰謝料の算定基準は3つあります。
保険会社の担当はあくまで任意保険の基準で示談金の額を算定しますので、弁護士の基準で算定すると金額が増える可能性が高いのです。
保険会社側から「交通事故の示談金でしたらこの金額になります」と言われても、それはあくまでその保険会社の算定基準ではその金額になるというだけの話です。
保険会社の言葉は鵜呑みにせず、弁護士などに相談して交通事故の慰謝料を計算してもらうことをおすすめします。
保険会社は営利会社です。
支払う示談金が少なければ、保険会社側が得になる関係です。
保険会社のスタンスと保険会社の担当は、交渉のプロであることを忘れないでください。
交通事故の示談(慰謝料請求)は焦らない
交通事故で怪我をすると治療費がかかりますから、そのような事情から早く慰謝料を請求したい気持ちもわかります。
しかし、焦って話をまとめてしまうと後悔のもとです。
交通事故の慰謝料は、被害者にとって今後の治療費や生活にも使う重要なお金になります。
保険会社の算定基準や自賠責の算定基準の他に弁護士の算定基準でも計算し、より被害者に有利な条件で請求しましょう。
また、示談のときは魅力的な金額に思えても、冷却期間を置くと示談金や示談内容に不満を持つ可能性も考えられます。
交通事故の示談は急いでまとめず、内容や金額を冷静に判断する冷却期間を置くことも重要ではないでしょうか。
示談交渉は怪我の症状が固定してから行う
加害者側の保険会社が、早い段階で示談交渉を持ちかけてきたら要注意です。
治療が済んでいない。
交通事故の怪我の症状も固定していない。
このような状況で示談に応じてしまうと、後から後遺障害の慰謝料請求が難しくなることがあります。
保険会社や加害者が、早い段階で示談を持ちかけてきたときは注意してください。
示談は症状固定を待って行いましょう。
加害者側の保険会社や加害者が示談を急かす場合は、症状が固定していない旨をしっかりと伝えてください。
弁護士に依頼して、弁護士を連絡の窓口に据える方法もおすすめです。
示談は交通事故の対応を得意とした弁護士に依頼する
弁護士の中でも交通事故の対応や慰謝料請求を得意としている弁護士は、交通事故の示談交渉も得意としています。
交通事故の示談交渉を得意としている弁護士に相談して、示談の進め方や被害者側が有利な条件でまとめるためのアドバイスなどを受けておくといいでしょう。
交通事故の案件を得意としている弁護士は、交通事故時の示談交渉にも慣れているため、経験から注意したいポイントや保険会社と話すときの留意点なども教えてくれるはずです。
示談交渉そのものを弁護士に依頼することもできます。
弁護士に示談交渉を依頼すると、被害者側が直接加害者や保険会社とやり取りする必要はなく、弁護士が連絡や相手方とのやり取りをしてくれるのです。
交通事故の被害者の中には、加害者側と直接やり取りしたくない人もいることでしょう。
弁護士を立てておけば、基本的に示談交渉の方向性や内容などを弁護士と話し合い、状況に何か動きがあれば報告を受けるだけになります。
被害者の精神的な負担も軽くなり、治療や療養などに専念できるというメリットがあるのです。
ただし、弁護士に依頼すると弁護士費用がかかります。
弁護士特約を使ったり、事前に弁護士費用の準備をしたりするなど、弁護士の費用については注意してください。
弁護士に、費用倒れが心配である旨をあらかじめ伝えておく方法も有効です。
まとめ
交通事故の慰謝料でよく耳にする1日4,300円(4,200円)や8,600円(8,400円)などの金額は、自賠責の基準で使われる金額です。
基本は1日4,300円(4,200円)が使われ、通院頻度によっては8,600円(8,400円)が使われます。
1日8,600円(8,400円)という金額を提示されたら注意が必要です。
弁護士にも慰謝料を計算してもらうなど、本当にその金額が妥当かよく考えてみてください。
慰謝料の請求で後悔しないよう、注意しましょう。