目次
この記事でわかること
- ・成年後見制度には2種あるのがわかる
- ・家庭裁判所に申請し審判を受ける必要がわかる
- ・後見人は親族でも専門家でもなれる理由がわかる
成年後見人制度は、代理行為のため、健常者または障害を受けたものであっても、判断力をしっかりしていれば後見人になれ、司法書士などの専門家もなれます。
本人のために財産管理と法律行為を代理しますから、責任は重要です。
成年後見人制度は裁判手続きですから、申立人が必要になります。
申立人は、本人、配偶者、4親等以内の親族が申立人になることができます。
裁判手続きは、申立てに基づいて、審理が進みますから、後見人の選任は親族とは限らず、専門家が後見人になる場合はよくあります。
家庭裁判所の監督下におかれる後見人ですから、報告義務が発生します。
法律行為を代理する者の責任力は、どれだけ重大がお判りになるだろうと思います。
それでは、成年後見制度の手続きの流れと必要書類について、解説いたします。
成年後見制度とは?
成年後見制度とは、判断力が乏しい本人に対し、後見人が権利・財産を法的に管理しうる制度です。
超高齢化社会と介護問題は、社会の重要な論点になっています。
介護サービス事業者は、民間事業者も多く、自らサービス契約してお金を支払う必要があります。
そのため、判断力が乏しい本人になり代わり、法律行為を代理できる制度ですから、介護社会に不可欠な成年後見制度といえます。
結果として、メリット・デメリットがあったとして、今後、老齢化社会が加速されるにつれ、介護問題とリンクするあらゆる制度設計は急がれることになるでしょうが、成年後見制度はそのなかの一つです。
成年後見制度の2つの種類
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。
人の人生には時間軸があります。現在・過去・未来という時間軸は、世代を超えて誰もが共有できる現実があります。
制度は種類別に分類して、別々に後見人を区別することで、時系列における位置づけを図ろうとしています。
法定後見制度とは
法定後見制度は、時間軸として現在進行形です。
法に定められた制度に基づき、家庭裁判所の審判によって認められる制度です。
法定後見人制度は、「後見人」「保佐人」「補助人」の3つに分類されています。
3つの類型は、すべて本人のためにある代理権限の付与です。
後見人・保佐人・補助人は、家庭裁判所から選任および認められた本人のための代理人です。
代理権限は、常に本人の利益を中心としなければ、代理権という権限は成立しません。
決して、代理権は、権限の暴走を許さない法的範囲で制御されています。
法定代理人の権限は強く、かつては無能力者・禁治産者対応でしたが、現在では「精神障害で判断能力」を基準として、「欠く状況にある者」「著しく不十分である者」「不十分である者」と病気から起因する要件を3つに分類し、「後見人」「保佐人」「補助人」と設定されています。
任意後見制度とは
一方、任意後見制度は、将来・未来のためにある制度です。自分はやがて老いさらばえ、判断力が乏しくなるだろうという予測に基づき、将来、面倒見てもらうために後見人を設定できます。
まだ意識と判断力が、しっかりしている状態の本人しか活用できない制度です。
物事の判断力は、加齢とともに弱体化します。
法整備により補完できるならば、よりよい社会に向かうだろうという希望的観測は常にあります。
成年後見制度に起因となる判断力は、法制は常に根拠を要求しますから、病状・症状に応じた医師の診断書が必要になります。
なお、成年後見人制度は本人のために代わって財産管理をする制度ですから、後見人が自己保身および自己利欲のため、勝手に本人の不動産に担保設定して金融機関などから借金するなどという行為は許されていません。
家庭裁判所への申し立て
家庭裁判所は、身内関係の紛争を預かり審判を下す裁判所であり、離婚調停が代表的な例です。
成年後見制度などの身内に深く係る問題は、民間人の第三者的立場と関係するだけではなく、裁判所の判定によって後見人が選定され、裁判所は結果を裁判記録として保管します。
では、どのような手順で手続きは進んでいくのでしょうか。
申立て方法と順序
申立て方法は、順序によります。
法的手続きは、順序どおり進まなければ、途中で返され、行ったり来たりの繰り返しになります。
無駄な時間を削減するためには、順序どおりに進めていくことが大切になります。
申立て書類および資料収集
法的手続きには決まった様式がありますから、法的文書として通用する申立書を作成します。
戸籍謄抄本・住民票などの証明書、本人の財産目録などの資料を集めます。
ただし、申立人がまだ判断力がある本人の書類、および後見人候補の書類の両方が必要になってきます。
また、別途病状所見の根拠となる医師の診断書などが必要になります。
管轄の家庭裁判所に後見開始の申立てをする
事前連絡をして予約します。
飛び込み申請は避けてください。
予約制で日時を約束してから、家庭裁判所に出向いていきます。
書類審査を効率的に簡素化するためであり、申請手続きの混雑と時間の浪費を防ぐためです。
別途、本人、後見人候補者など関係人の面接があります。
家庭裁判所が成年後見人を選任する
裁判所には調査職員がいますから、調査を実行し、審理に入ります。
成年後見制度として条件が十分に備わっていて、相当と判断されたら成年後見人を裁判所権限で決定します。
家庭裁判所が審判を下し、申立人と後見人に対し書面で通知する
後見開始決定が下されると、裁判所は書面で通知します。
後見人は書類を送達・受領した日から2週間以内に、利害関係人から不服申し立てがなければ、送達された日から後見開始となります。
民事法においては「到達主義」、裁判所権限が出した書類は「送達主義」です。
書類は相手の手元に届いたときから、法的効力を発生させるという考え方です。
注意点について
後見人の選定は、定められた条件に基づきます。
法的欠格事由がある後見人候補者は、最初から除外されていますから後見人に選定されません。
家庭裁判所に申立て、審判を待つ間、親族間の紛争などの経緯がある選定候補者も同じく除外され、後見人に選ばれません。
本人の法律行為の代理や財産管理をする後見人ですから、厳しい判断基準があります。
家庭裁判所は、審判するうえで、家族など密接なる関係者を相手にする司法権であり、プライバシーに強く係る法廷であり、密閉された法廷として原則、非公開とされています。
申し立てに必要な書類一覧
おそらく、種類作成は、案外難しいため、専門家の手伝いが必要になるかと思われます。
自分で作成しても問題ありませんが、まず一度でクリアできるとは考えられないほど、難しいです。
それでは、書類関係について詳説していきます。
成年後見制度は、「後見」「保佐」「補助」の3種類があります。
介護認定と同様に、重度になるほど認定基準は厳しくなる傾向はあります。
介護度が重ければ「後見」、少し軽度なら「保佐」、もっと軽度なら「補助」です。
「後見人」「保佐人」「補助人」という上下関係を序列化し、上に行くほど責任力は厳しくなるように設えられています。
後見人による書類
後見人に設定されたら、次の書類が必要です。
- ① 申立書
- ② 申立て事情説明書
- ③ 親族関係図
- ④ 親族の意見書
- ⑤ 後見人等候補者事情説明書
- ⑥ 財産目録
- ⑦ 相続財産目録
- ⑧ 収支予定表
保佐人による書類
- ① 申立書
- ② 代理行為目録
- ③ 申立事情説明書
- ④ 親族関係図
- ⑤ 親族の意見書
- ⑥ 後見人等候補者事情説明書
- ⑦ 財産目録
- ⑧ 収支予定表
補助人による書類
- ① 申立書
- ② 代理行為目録
- ③ 同意項目目録
- ④ 申立事情説明書
- ⑤ 親族関係図
- ⑥ 親族の意見書
- ⑦ 後見人等候補者事情説明書
- ⑧ 財産目録
- ⑧ 相続財産目録
- ⑨ 収支予定表
以上が書類形式です。
書類の中で、補助人には要求され、保佐人だけが「相続財産目録」を書類として要求されていない事実があります。
「相続財産目録」は相続時に必要なる書類で、相続税申告・納税には欠かせない情報書類です。
一般的な「財産目録」は相続前の財産目録であり、相続税申告計算に乗る「相続財産目録」がなぜか設定されていません。
書面主義は、「後見人」「補助人」には「相続財産目録」を書類で提出させますが、「保佐人」における必要提出書類として「相続財産目録」は完全に削除されていますが、理由は定かではありません。
「保佐人」の位置づけは「補助人」よりまだ重い病状の本人を保佐する役目ですが、理解し難い理由は、「相続財産目録」を要請しない制度となっています。
いずれにしても、成年後見人制度は代理制度ですが、将来やって来る相続を考えるとき、本人は被相続人となりますから、「相続財産目録」は必要となってきます。
申請書類に関して、実務的に考え、保佐人の申立て申請であったとしても、「相続財産目録」は作成しておいたほうが無難と考えられます。
家庭裁判所による事実調査・面接
家庭裁判所の仕事は、申立てに基づいて、担当調査官を選任して調査します。
ある意味で、権力機関と同じであり、審判まで調査・実行しなければならないです。
調査権において、あまり知られていませんが、裁判所職員は申立てに基づいて、事実調査を実行します。
検察官とか弁護士でもない立場として、裁判所事務官は事案に対し調査できます。
裁判所は裁判があって仕事が始まりますから、それなりのコスト負担はあって当然です。
当然に、成年後見制度は、認められるかどうかは、調査官の調査報告を受けて、家庭裁判所の裁判官による審判によります。
家庭裁判所による事実調査・面接は2種類ある
調査は申立てに基づいて実行されますから、本人自身に対する調査と成年後見人の候補者の両方に調査を開始します。
面接は、原則として家庭裁判所において実施されますから、裁判所まで行かなくてはなりません。
ただし、身体の自由が利かない場合は、この限りではありませんから面接官がわざわざ出向いていく場合もあります。
申立人と後見人候補者は原則として別々ですから、別々に調査および審理されます。
どちらかに齟齬および虚偽(通謀表示)が認められたら、申立ては認められなくなりますからご注意ください。
申立人への調査
申立人は、意思判断および決定力を出せる健康状態ならば、家庭裁判所に呼ばれて面接を受けます。
判断能力がなく、自宅にいる場合、調査職員が出向いていき、状況を確認します。
判断能力がない申立人は、事実上、個人として申立てする意図を失っていますから、事実上、申立人は別なる代理者です。
最近、法律の専門家が後見になるケースが多い実情は、親族が申立人になるより、依頼を受けて専門家が代行し後見人になる業務をしています。
後見候補者への調査
家庭裁判所は、後見人候補者の中から後見人を選任決定します。
申立人と同様に、後見人候補者の適格性を判断するものですから、不適格と認定されれば審理は進みません。
調査職員は、後見人候補者と面接・調査を行うことで、適格性があるかどうかを確認します。
裁判手続きは、現地調査をしなければ、審理を進める上で阻害要因の有無の確認と、審判を下す法的根拠を欠くからです。
書面審理だけでは、成年後見人制度を悪用される危険性がありますから、やむを得ない調査として受け入れるしかありません。
なお、家庭裁判所に呼び出されたときの面接に同席できる人は、申立人、本人、後見人候補者のほか、専門家であるケアマネージャー、ヘルパー、司法書士、弁護士などが同席できます。
できるだけ、同席をお願いすれば、あとの審理を進めるうえで、心強い存在ですから、専門家の同席をお願いしてみてください。
面接は説明しなければ事が進みませんから、同席者の力を借りることが必要になります。
審判にかかる期間
家庭裁判所の審判は、書面において送達期間は2週間以内とされ、不服申し立てがない場合は法的効力が実行されます。
申立したら2週間以内が留保されていると考えたらわかりやすいでしょう。
2週間以内に不服申し立てはできますが、その期間を過ぎると法的効力は失われますが、成年後見人を誰にするかという選任に対しての裁判闘争は認められません。
審判が下り、確定するまでの期間が2週間程度になります。
結果において、成年後見人制度は、後見人として選ばれた者が、権利を獲得する事実は揺るがない制度になっています。
同時に審判を下すまでの間、審理する期間が長くかかります。
法定後見人制度の場合、本人の病状の重度さによって審判までの時間が長く係る場合があります。
事実確認として医師の診断が必要となり、後見人選任の期間は2~5カ月程度かかるとされています。
すべて確認する関係者などに要する期間になりますから、確認する親族などが少ない場合、期間は自ずと短縮され1~2カ月ほどに短縮されます。
審判の告知後、業務が開始する
家庭裁判所で、審判され、成年後見人となってから、後見開始です。
後見開始が決定されて、後見人は本人のために代理人となります。
身内だからといって、誰もが後見人にはなれません。
介護と類似する身の回りの世話は、代理権限を取得した立場はありますが、権限だけを獲得したからといって、後見人としての業務ができなければ、法制度は形だけのものとなってしまいます。
成年後見制度は、介護制度そのものではないですが、密接に関係している実情は、否めない現実です。
なお、成年後見制度として認められると、家庭裁判所の監督下に入りますから、状況報告する必要があります。
また、成年後見人制度が終了するときは、本人が死亡したときに終了しますが、一度選定されたら、勝手に解任・辞退はできなくなりますから要注意です。
業務開始といっても、仕事をして代理業という商売ではなく、給与をもらう立場ではありませんから、精神的に負担がきつく圧し掛かってきます。
まとめ
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。
法定後見制度は現在の病状を患った者に対する制度であり、任意後見制度は将来に病気になった場合に予定する後見人制度であり、時間軸を基軸として判断します。
後見人は、本人の財産管理や介護サービスの契約など、法的行為を代理する代理行為として位置づけられています。
必要書類に記入し、家庭裁判所に申立て、審判を受けるまでの一定期間中待つ必要がありますが、審判として通知されると法的効果が実行されます。
法的申請書類の煩雑さなどがあるため、司法書士などの専門家に委ねたほうが、手続き上はスムースに事は運びますから、申請などは専門家に相談しましょう。