現代社会において度々話題となる騒音問題。小さな子供が部屋を駆け回ったり、大きな音で楽器を演奏したり、騒音の具体的な内容を挙げればキリがありません。たとえ洗濯機や掃除機といった生活音であっても、それが深夜帯であれば相当な騒音となります。しかし、いくら騒音問題を解決したいといっても、壁1枚、床1枚でつながれた集合住宅に住んでいる場合には、住民同士の嫌な争いは避けたいものです。
そこで、今回はマンションでの騒音問題に対する苦情を伝える手段をいくつか紹介していきます。
マンションの騒音の主な原因
騒音は、その「大きさ」と「時間帯」の2つが密接に関わっており、平成10年に交付された環境庁の告示第64号(平成24年3月改正告示54号)によると、昼間は55デシベル以上、夜間は45デシベル以上が騒音の基準とされています。この基準は一般的な人の生活リズムに合わせて設定されており、就寝時間である夜間は数値が比較的低めに設定されています。
マンションの騒音トラブルは真上の部屋との間で発生するケースが多く見られますが、その主な原因には住居者の足音や、小さな子供が部屋を駆け回ることによって発生する振動音、深夜や早朝に洗濯機や掃除機をかける音、ステレオやピアノ、ギターなどといった楽器の演奏による音、ペットの鳴き声や話し声が挙げられます。
マンションの騒音に対する苦情の伝え方
24時間営業のコンビニや深夜営業のスーパーができたこと、職種の幅が広がったことなどから、現代人の生活リズムは多種多様となっています。
深夜に仕事があったり、活動時間が深夜に及ぶような場合には、それほど音を立てているつもりはなくても自身が騒音の発生源になってしまう可能性が十分にあります。また、そのような場合には近所づきあいも時間の都合上、必然的に少なくなってしまい、直接的に騒音トラブルを伝えにくくなってしまいます。
そこで、ここからは直接苦情を伝える手段はもちろんのこと、それ以外の苦情を伝える手段について合計4つの方法を見ていきます。
○管理組合、大家さん経由で伝える
マンションでの騒音問題にいち早く対処してくれるのが、管理組合、大家さんです。管理組合や大家さんといったマンションの管理にあたる人は、賃貸借契約に基づき、入居者が暮らしやすい快適な住居を提供する義務があります。つまり、騒音が平穏な生活を乱す原因となっている場合、それをやめさせなければならないのです。
そこで、実際に騒音問題が発生した際には、まず管理組合に、そのマンションに管理組合が設置されていなければ大家さんに、騒音問題の相談をしましょう。その際、何時頃、どのような音がどれくらい続くのかなど、被害状況をできるだけ詳しく伝えることで、騒音の発生元の特定や管理組合・大家さんの対策がやりやすくなります。
多くの場合、管理組合や大家さんに相談した時には、管理組合や大家さんが騒音の内容を記載したチラシを入居者全員に配布し、それでも直らない場合には発生元である入居者に直接注意喚起してくれます。
入居者に直接注意喚起すると匿名性はなくなってしまいますが、最終的には管理組合や大家さんが騒音の発生元の入居者とその被害者との間に入って、トラブルのないようきちんとした話し合いの場を設けてくれます。
○直接訪ねて伝える
マンションでの騒音問題に対する苦情を伝える手順として、もっとも手っ取り早いものが、「直接相手の家まで訪ねて苦情を伝える」ことです。管理会社や大家さんに任せるよりも、騒音が起きたときの状況や苦情を自分の言葉で伝えることができるので、余計な誤解が生じるのを避けることができます。
しかし、マンションにおいては、隣同士はもちろんのこと、ましてや上の階と下の階では入居者同士の面識がないことがほとんどです。逆上されたり、直接苦情を伝えることで顔を覚えられ、復讐にあう可能性も十分に考えられます。直接訪ねるのは最終手段とし、不安であれば隣の部屋の方に相談して一緒に来てもらうなどの対策を合わせてとりましょう。
〇警察を呼ぶ
管理会社や大家さんに相談しても効果がない場合や、直接訪ねるのは気が引ける場合には、警察を呼ぶのも1つの手です。警察は騒音に対する通報に慣れているので、状況に応じた最善策をとってくれます。また守秘義務により通報したことが騒音元の入居者に知られることもありません。このような匿名性に加え、通報後すぐに騒音を収めることができる、警察が介入したことで以後騒音が出しづらくなることも上記の2つと異なるメリットとして挙げられます。
騒音問題で警察を呼ぶのは多少なりとも抵抗があるかもしれませんが、本来安らげるはずの空間を騒音によって害されることは相当の苦痛を伴います。どうしても我慢できなくなったら迷わず警察に相談してみましょう。
〇弁護士に依頼する
はっきりとした定義のない騒音問題では、被害者は感情的に苦情を伝えるのではなく、誰もが理解し納得できる説明を騒音元の入居者にしなければなりません。そこで、その説明をする手助けをしてくれるのが弁護士です。現在、日本には生活音による騒音を規制する法律がないため、法的な理由で苦情を伝えるためには騒音元の入居者の行為が民法709条の不法行為にあたることを立証しなければなりません。このように、普段馴染みのない法律を用いるには専門的な知識が必要とされるので、弁護士に依頼することは苦情を伝えるのに非常に有効な手段となります。
騒音問題は訴訟に発展するケースも少なからずあるので、そういった事態も視野に入れ、弁護士に依頼してみるのもよいでしょう。
まとめ
マンションでは、入居者同士で大きな音を出さないようにするという心掛けや、生活音に関してはある程度受忍するといった配慮のバランスをとって生活していかなければなりません。それでも騒音問題がトラブルに発展してしまった場合には、上記のように、「管理組合・大家さん経由で伝える」、「直接訪ねて伝える」、「警察を呼ぶ」、「弁護士に依頼する」といった手段の中から、自分に合ったものを選び、行動に移すようにしましょう。
共同生活を送る身として、トラブルは最小限に抑え、今後も暮らしていくのに快適な環境を作り上げていくことが大切です。