ドラマや映画の中の相続を見ると、「お金持ちならではの悩み」というイメージを抱くかもしれません。しかし、相続は一生のうちでだれもが一度は経験しうるものです。相続税に関しても、平成25年度の税制改定以降、相続税の課税対象割合はそれ以前の4.2%から6%程度になると試算されています。つまり、相続税の対象の幅が拡大されたことによって、これまで無縁だと考えていた人にとっても、相続税は他人ごとでは済まされなくなっているのです。
いざ自分が相続にかかわるとき、相続税について元からよく知っているという人はそう多くないように思われます。しかし、焦ることはありません。ある程度の知識を持っておけば、落ち着いて対処することができるのです。
今回は、そんな「相続税」という身近なテーマについて、簡単に説明していきます。
相続税が発生するケースとは?
まず原則として、相続税は死亡した人から取得した財産全般にかかります。これには相続のほか、遺贈や死因贈与による財産が含まれています。この財産は現金のみにとどまらず、経済的価値のあるすべてのもの(預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋、貸付金、特許権、著作権など)を指します。
しかし、これらの財産を取得したすべての人が相続税の課税対象になるわけではありません。相続税は、定められた「基礎控除」の額を超える遺産がある場合にのみ発生するからです。つまり、遺産の総額がこの基礎控除額以下の場合は、相続税は一切かからないのです。
具体的な基礎控除額は、法定相続人(特別の遺言や本人の破棄がない限り相続を受けることになる人)の人数に応じて変わります。現行では次の式の結果となります。
基礎控除額=3000万円+6000万円×法定相続人の数
すなわち、基礎控除額は、法定相続人が1人のとき3600万円、2人のとき4200万円、3人のとき4800万円、4人のとき5400万円、5人のとき6000万円・・・となります。遺産の総額がこれ以下の場合は相続税は発生しません。
相続税の申告方法と締切期限
相続財産の総額が基礎控除額を超える場合、相続人(相続によって財産を取得した人)は相続税の申告を行います。また、「配偶者に対する税額軽減」の特例を受ける場合も同様です。ただし、相続人が複数いる場合は別個に申告書を提出する必要はなく、1通の申告書に相続人全員が署名・押印しその下に各自の納税額を記載すればよいことになっています。
相続税の納付は、相続人が申告に基づいて各自が個別に行えばよく、税務署のほか、最寄りの銀行や郵便局の窓口でも収めることができます。
期限は、相続税の申告・納付ともに、被相続人が死亡した翌日から10か月とされています。例えば被相続人が1月10日に死亡した場合は、11月10日が申告・納付の期限となるということです。
相続税の申告書は第1票から第15表続まで多くの様式があります。申告書の用紙は各税務署で受け取ることができます。さらに、申告書の記載方法のパンフレットも無料で配布されているので、それを利用してみるのもよいでしょう。
相続税の申告書は煩雑なので、税理士などの専門家に依頼するという方法もあります。
相続税がどのくらいかかるかどうやったらわかるの?
先ほどの説明の通り、相続税は、遺産の総額から基礎控除額を差し引いた分だけ課されます。この基礎控除額は法定相続人の数によって決まります。まずは、法定相続人の数を把握しましょう。亡くなった人に配偶者がいた場合、配偶者は常に法定相続人となります。この後の優先順位として、①子(死亡している場合は、さらにその子)、②子がいない場合は直系尊属(両親)、③両親もいなければ兄弟姉妹、となります。これに該当する人数が、法定相続人の数ということになるのです。
それでは、基礎控除額の計算式をもう一度確認しましょう。
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
これによって算出された基礎控除額を遺産の総額から差し引いて出てきた額が相続税の課税額です。控除額が遺産総額以上になったときは相続税はかからないことになります。
細かい部分にはなりますが、基礎控除額の計算方法には例外もあります。たとえば、地価の高い都市部などでは、自宅の敷地だけで控除額を超えてしまう場合があります。この場合、手持ちの現金で相続税を払えなければ、土地を売却するほかありません。しかし、「最低限、住む場所は保護されるべきである」という考えから、配偶者や同居していた子どもなどが自宅を相続する場合、敷地の330㎡までの部分を80%引きの価額で計算してよいことになっているのです。
まとめ
相続税の対象と申告方法、そして相続税額の算出方法は以上の通りです。ここまでの内容で、大まかな部分については理解していただけたことかと思います。
しかしそれと同時に、今回ご紹介した部分はあくまでも基本的な知識であることも事実です。相続税額を最小限にするためには、利用できる制度や特例はできる限り利用する必要があるので、さらに詳しい部分も抑えなくてはなりません。弁護士や税理士のような専門家を活用して、意見を聴くなどするとよいでしょう。