犯罪を犯して有罪になった場合や犯罪を犯したと疑われて逮捕されてしまった場合、前科や前歴がつきます。
前科と前歴は、言葉は似ていますが内容は全く異なるものです。起訴されず前科がつかなかったと思っていても、前歴がついていたなんてこともあります。
実際、この2つはどのように違うのでしょうか?
前科とは?
前科とは、罪を犯して刑事裁判で有罪判決を受けた場合の犯罪履歴のこといいます。前科がある場合、その人は裁判官によって犯罪を行ったと認定されて有罪になったことがあるということです。
懲役や禁錮などの実刑で前科が付くと思われがちですが、略式起訴で罰金刑を受けたという場合も有罪判決と同じ前科が付きます。そのため、スピード違反や器物損壊罪などの軽い犯罪でも罰金刑を受けてしまえば、その実行犯は前科者となってしまいます。
テレビや本などに出てくる前科者はとても恐ろしいイメージがありますが、実際には意外と簡単に前科がついてしまうことがあるので注意が必要です。
前歴とは?
前歴は、逮捕された場合に付きます。
逮捕されると、検察官が起訴するかしないかを判断することになりますが、検察官が起訴するべきでないと判断した場合、不起訴処分を受けます。
不起訴となる理由はおおまかに3つで、①嫌疑なし(犯行に関わっている可能性がないと判断された場合)、②嫌疑不十分(犯罪を行った可能性はあるが、それを立証する証拠が少ない場合)、③起訴猶予(犯罪を行ったと認められるが、罪が比較的軽い場合や、被疑者が深く反省している場合など)があります。
不起訴処分となった場合、前科は付きませんが、逮捕されたという事実は残りますので前歴は付くことになります。
このように前歴がつく場合には、その人が犯罪に全く関わっていなかったケースも含まれてきます。前歴があるからといってその人が「犯罪者」になるとは限りません。
その後の生活に支障があるの?
前科や前歴があることによって、一般の就職が難しくなることはあまりありません。
前科・前歴の情報は、検察や警察、市区町村が管理していますが、一般にはアクセスすることはできません。そのため、企業が調べようにも調べることはできず、また、プライバシーに関する情報なのでわざわざ聞いてくる企業も少ないでしょう。
ただし、前科を記載する欄がある履歴書の場合に記載をしなかったり、採用面接の際に前科があるかないかについて話題になってしまった場合に嘘をつくと、経歴詐称と言われてしまうことはあり得ます。その場合、犯罪にはなりませんが、後に解雇問題に発展することなどはあり得ます。
また、弁護士などの一部の職業資格の場合、前科があることでその職に就けないことがあります。例えば、禁固以上の前科がついている場合には、弁護士や弁理士、教員にはなれません。禁固以上の前科があることが、これらの資格の欠格事由になっているからです。
これと同様に、公務員の場合にも前科が欠格事由になります。具体的には、国家公務員についても地方公務員についても、禁固刑以上の前科がある場合には資格が得られないとされています。
職業以外にも結婚、育児、人間関係などに悪影響があるのかと思われるかもしれませんが、前述のように、一般人では容易に前科・前歴の情報を調べることはできませんので、基本的には問題ないといえるでしょう。しかし、もし、前科・前歴があると発覚した場合、これまで築き上げてきた関係性が一気に崩壊する恐れもあります。
そのため、前歴はまだしも、前科を付けないことに越したことはありません。
まとめ
前科・前歴の情報は一生残ってしまいます。犯罪の大きさでも影響度は違うでしょうが、禁錮以上の前科がある方はこれまで見てきたような悪影響が出てくる場合があります。
誰にも話さなければ、前科・前歴の情報が発覚してしまうことはほとんどありませんが、その後の人生を考えるにあたって、婚約者や会社など信頼を得た後に打ち明ける方が良い場合もあります。
大切なことは、その後しっかり反省し、二度と罪を犯さないことでしょう。自分を大切に思ってくれる人々を裏切らないように行動していく必要があるといえます。”