目次
この記事でわかること
- ・自己破産した時に家族に与える影響について知ることができる
- ・家族のためと思っても自己破産する時にやってはいけないことがわかる
- ・自己破産以外の方法で家族への影響を最小限に抑えることができるとわかる
借金の返済に行き詰まり、自己破産をしようかと考えている時には、家族にどのような影響があるのか心配することと思います。
はたして自己破産することで、家族にはどのような影響があるのでしょうか。
また、自己破産する際に、家族や親族に迷惑をかけないようにと思ってしたことが、かえって大変なことになる場合があります。
ここでは、自己破産をする際にしてはいけないことについて確認しておきます。
債務整理の方法は自己破産だけではないことから、他の方法についても知っておき、どのように債務整理を行うといいのかを考えてみましょう。
自己破産とは
自己破産とは、個人の人が借金などの債務を整理する際に行う手続きの1つです。
債務整理には、任意整理、特定調停、個人再生、自己破産の4つの方法があり、それぞれ手続きの内容が異なります。
このうち、自己破産とは裁判所での手続きにより借金の支払い義務を免除してもらうための手続きとなります。
借金の返済を免除してもらう代わりに、保有する財産についてもその大部分を手放さなければなりません。
自己破産の手続きを行う際には、弁護士に破産の手続きを依頼する人が大半です。
弁護士に依頼すると、弁護士から自己破産手続きを受任したことを記載した通知が、貸金業者などの債権者に送付されます。
受任通知を送付することで、それ以上の債権の取立てはストップし、債権者から債務者に直接連絡を取ることもできなくなります。
まず、弁護士と一緒に必要な書類を作成し、裁判所に破産の申立を行います。
この時、裁判所に予納金などの必要な金額を納付しなければなりません。
自己破産の申立を行ってから裁判官との面談を行うなど必要な手続きを行った後、破産手続きの開始決定がされます。
破産手続きの開始決定により官報に名前が掲載されます。
それから2週間ほどで、自己破産の申立を行った人は破産者として確定し、債務の返済が免除されることとなるのです。
自己破産を行うと、借金の返済が免除される代わりに、財産の大半を手放す必要があります。
これは、財産を売却してお金に換えて、債権者に少しでも返済するためです。
ただし、生活のために必要な財産まで売却してしまうと、破産者のその後の生活が立ち行かないこととなってしまいます。
そのため、家具や家電などの生活必需品や99万円以下の現金などについては、手放す必要はありません。
一方で、土地や建物などの不動産や20万円以上の価値がある財産については、自己破産をした場合に手元に残しておくことはできません。
マイホームを持っている人の場合、現在住んでいる自宅は生活必需品と考えるかもしれませんが、手放さざるを得ないのです。
自己破産をしたときの家族に与える影響・・デメリット
自己破産をすると、ほとんどの財産を手放す必要があるなど、その後の生活には大きな影響があります。
それでは、自己破産をした人の家族にはどのような影響があるのでしょうか。
自己破産した人の家族にとって、マイナスの影響が出る可能性のある内容を確認しておきます。
家族が保証人となっている場合は要注意
借金について、家族や親族が保証人となっていることがあります。
もし借金をした本人が自己破産をした場合、その保証人が本人に代わって返済しなければならないため注意が必要です。
本人が返済している間は保証人には何も起こらないのですが、本人の返済が滞ってしまうと保証人に対して請求してくるのです。
保証人となっている家族が代わりに返済できるのであれば、それでも構いません。
保証人は、後から本人に対して支払った金額を請求することができるため、自己破産などを回避するためには有効な方法といえます。
しかし現実的には、保証人となった人も本人に代わって借金の返済をすることは難しいでしょう。
この場合、本人だけでなく保証人となっている家族も自己破産することを検討しなければなりません。
その結果、家族の中から2人が自己破産することとなります。
2人とも大半の財産を手放すこととなるため、その後の生活はかなり大変なものとなることが想定されます。
また、本人が自己破産をする一方で、保証人は任意整理を行うこともできます。
保証人となっている債務について、債権者である金融機関や貸金業者と交渉し、その後の返済方法を見直すのです。
将来発生する利息をカットし、3~5年以内に完済できるような返済計画でお互いに合意できれば、自己破産よりその後の生活への影響は少なくなります。
これとは別に、本人が自己破産ではなく任意整理を行って、全体の返済を見直すという選択肢もあるかもしれません。
ただ、本人の支払い能力の問題や、債権者と合意できるかといった問題をクリアしなければならず、確実な方法とはいえません。
本人名義の財産を手放さなければならない
土地や建物などの不動産、20万円以上の価値のある財産については、必ず手放さなければなりません。
自宅の名義が借金をしていた人になっている場合には、一緒に住んでいる家族もそのまま住み続けることはできなくなります。
また、自己破産した場合には、すぐに住宅ローンを組むこともできません。
そのため、賃貸住宅への引っ越しをしなければならないのです。
また、20万円以上の価値のある財産として車も手放す必要があります。
家族の車まで手放す必要はありませんが、本人名義の車を家族が利用している場合には、その車も対象となります。
さらに、保険契約についても解約しなければなりません。
そのため、将来の備えとして利用していた保険を維持することができなくなるため、家族は新たな不安を抱えることとなるのです。
なお、本人の名義となっている財産や預金を、家族の名義に変更したり家族の口座に移動したりすることはできません。
もしこのようなことをしてしまうと、財産隠しとして自己破産が認められずに債務の免除ができなくなってしまうこともあります。
財産を隠すような行為は、自己破産の手続きを行ううえでは決して行ってはならないのです。
家族の信用情報に影響はないが審査が通りにくくなることも
自己破産をした人の情報は、信用情報に登録されます。
たとえば、自己破産した後はクレジットカードを作ったり住宅ローンを組んだりすることが一定期間できなくなるのです。
それでは、自己破産した人の家族についてはどうなのでしょうか。
家族は自己破産した人とは別人ですから、たとえ自己破産した人の身内であっても信用情報に残ることはありません。
しかし、金融機関の中には過去の顧客情報からより詳細に審査する場合もあります。
そして、過去に自己破産した顧客の家族であることがわかった場合に、審査に通らなくなるケースがあるのです。
自己破産した人が借金をしていた金融機関からは借入を行わないことが、確実に審査に通るためのコツといえます。
自己破産をしても家族に影響がないこと
ここまで、自己破産をした場合に家族に及ぶ影響について考えてきました。
一方で、自己破産することで家族に影響が出るのではないかと心配なことでも、実際には影響がないものもあります。
具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
家族の預金や貯金は没収されることはない
家族が自己破産した場合、一緒に住んでいる家族も借金の返済に苦しんでいるのはわかっているかもしれません。
しかし、家族だからといって借金の返済ができない人を助けなければならないわけではありません。
自己破産をした人がいる場合でも、家族の名義となっている預金や貯金を手放す必要はありません。
ただし、家族が保証人となっている場合には、本人名義の預貯金と同じように扱われるため、注意が必要です。
家族の就職・・転職や資格の取得に影響はない
家族の中に自己破産した人がいると、そのことが就職や転職に影響するのではないかと心配する人がいます。
しかし、自己破産した人の記録は信用情報には記載されても、第三者がその情報を目にすることはありません。
また、信用情報に載るのは自己破産した本人だけであり、家族の情報について載ることはありません。
そのため、家族が自己破産しても就職や転職には影響ありませんし、現在の職業を解雇されることもありません。
また、自己破産した人は一定期間その職業に就くことができないという制限を受けるものがあります。
たとえば、弁護士や税理士のような士業、貸金業や生命保険募集人といった他人の財産を扱う仕事などが該当します。
ただ、このような制限を受けるのは、破産手続きの開始から数か月から半年程度とされています。
このように制限を受ける職業を家族がしている場合もありますし、これからそのような職業をしたり資格を取得したりしようとしている場合もあるでしょう。
しかし、自己破産した家族がいるとしても、家族は一切その影響を受けません。
新たにそのような資格を取得することも、仕事を始めることも問題なくできるのです。
子供の結婚に影響はない
子供が結婚する際に、両家で戸籍謄本を取り交わすことがあるかもしれません。
このような場合に、親が自己破産したということが記載されていると、結婚が破談になってしまうのではないかと心配になるかもしれません。
しかし、自己破産したことが戸籍謄本に記載されることはありません。
これは家族の自己破産についてだけでなく、本人の自己破産についても戸籍謄本には記録されません。
そのため、結婚相手やその親族などに自己破産について知られることはないでしょう。
別居している家族や親族に知られることはない
一緒に暮らしていない家族や親族などに、自己破産したことを知られてしまうのではないかと心配する人もいるかもしれません。
しかし、自己破産した場合であっても、一緒に生活していない家族や親族などに影響はありません。
裁判所や債権者などから連絡が入るのではないかと考えるかもしれませんが、そのようなことはないのです。
注意しなければならないのは、家族や親族が一緒に生活していない場合でも、保証人になっている場合には影響があることです。
本人が返済できない場合には保証人が返済しなければならないため、必ず債権者などから連絡が入ります。
そのため、自己破産したことを知らせておき、保証人としての対応を考えておかなければなりません。
自己破産前の離婚は要注意
自己破産すると自宅や車などの財産を手放さなければならないため、その前に離婚する人がいます。
離婚する際に財産分与を行って、自宅などの名義を配偶者に移しておくことで、自己破産しても自宅などの財産を手放す必要はなくなるのです。
しかし、離婚をして財産分与を行うことは、自己破産の際に財産隠しを行ったと判断される可能性もあります。
仮に財産隠しとみなされた場合には、自己破産することができず、債務の免責が許可されないことにもなりかねません。
自己破産をする前に、財産を守るために離婚するのは絶対に避けなければなりません。
また、自己破産以外の理由で離婚する場合でも、財産分与は最低限にしておく必要があります。
自己破産をすると家族にはバレる
ところで、自己破産したことを一緒に住む家族にも知られたくない場合に、家族に内緒にしておくことはできるのでしょうか。
自己破産するためには、弁護士との打ち合わせや書類作成、裁判官との審尋など多くの手続きが必要となります。
そのような手続きを行うために何度も出かける必要があるため、内緒にしていると家族にはどこで何をしているのか不審に思われるかもしれません。
また、裁判所に提出する書類に、同居する人の所得証明書や源泉徴収票が含まれています。
同居家族であれば所得証明書を取得することは可能ですが、場合によってはより詳細な書類の提出が求められる場合もあります。
例えば家族に内緒で給与明細などの書類を持ち出すことができるのかを考えると、相当困難だということがわかるかと思います。
当然、自己破産により自宅を手放したり車を処分されたりすれば、家族も黙ってはいないでしょう。
自己破産した本人だけでなく家族の生活も一変し、大変に大きな影響を受けます。
さらに、自己破産した人はクレジットカードを使うことができなくなることも、家族に知られるきっかけとなります。
特に、自己破産した人が作った家族カードを持っている場合、そのカードは使えなくなるため、直接的に影響が出ます。
すでに自己破産の申立をする前の段階で、債権者から督促の電話が自宅にかかってきたり郵送物が送られてきたりしている可能性もあります。
また、最悪の場合には、債権者から裁判を提訴されることも起こり得るのです。
このような状況を考えると、自己破産することを家族に内緒にしたまま手続きを進めるのは難しいと思われます。
自己破産をする前の段階で自己破産することを伝えておかないと、かえって家族の反発を招く原因になると考えられるのです。
家族に内緒にするのではなく、家族の協力を得ながら進めることが理想なのです。
家族のためを思っても自己破産時にやってはいけないこと
自己破産をすれば、債務の返済が免除される代わりに、財産を手放す必要があります。
一方、債権者は貸したお金が返ってこない状態となり、大きな損をすることとなります。
このような状態になることを回避するため、自己破産する前に絶対にしてはいけないことがあります。
家族のためと思ってとった行動が、逆に家族を悲しませる結果になることもあるので、注意が必要です。
財産隠しをしてはならない
自己破産した人の財産については、その大半を手放すこととなります。
自宅や車などの財産を処分して債権者に対する配当の原資とするためであり、手元に残るのはわずかな現金と生活必需品だけです。
一緒に生活する家族のことを考えると、少しでも財産を残しておきたいと考えるのが普通だとは思います。
しかし、そのために車などの財産の名義を家族に変えてしまったり、預金を引き出して家族の口座に振り込んだりしてはいけません。
また、所有している財産すべてを裁判所に申告しないで済ませてしまおうとすることも認められません。
もしこのようなことをした場合には、財産を隠したと判断される可能性があります。
財産を隠して債権者に対する返済を逃れる行為は、自己破産により債務の免除を受けようとする人が行ってはいけないことなのです。
自己破産をして債務の免除が認められるのは、すべての債務を公平に取扱い、すべての財産を正しく申告しているからです。
そのような最低限の原則が守られない場合には、債務の返済を免除して救済する必要はないと裁判所に判断されてもおかしくないのです。
財産隠しは自己破産の不許可事由である、と明確に定められています。
またそれだけでなく、財産隠しが悪質な場合には詐欺破産罪という犯罪となって、刑罰を科されることもあるのです。
安易な気持ちで財産を家族名義に変更したり、正しく申告しなかったりすることが思わぬ結果を招くことがあるため、自己破産前後の行動は慎重にしなければなりません。
特定の債権者にだけ返済を行ってはいけない
自己破産を検討している人の中には、家族や親族からお金を借りている人がいるかもしれません。
このような人に対する借金についても、自己破産するとその借金の返済は免除されます。
しかし、そのことはお金を貸した人にとっては、貸したお金が返ってこなくなることを意味します。
そこで、自己破産の手続きを行う前に、家族や親族からの借金だけ先に返済してしまい、その後に自己破産の申立をしようと考えることがあります。
しかし、このように特定の債権者に対してのみ先に返済することは、自己破産する際に債務を平等に取り扱う原則に反します。
もし債権者である家族が借金返済のお金を受け取っている場合には、その返済はなかったこととされます。
そのため、破産管財人は債権者である家族や親族から、借金返済により受け取った金銭を回収するのです。
すべての借金や債権者を平等に取り扱うために、不公平な返済がなかった状態に戻してから、自己破産の手続きを行うこととされます。
なお、特定の債権者だけに借金を返済した場合だけでなく、家族などからの借金を裁判所に申告しないことも認められません。
このような行為も、債権者平等という原則を害するものであると判断されるのです。
家族への迷惑を減らすなら任意整理がおすすめ
自己破産をすると、家族への影響は決して小さくありません。
そこで、債務整理を行う際に自己破産以外の方法についても検討するといい場合があります。
ここでは、そんな債務整理の方法の1つである任意整理をご紹介します。
自己破産よりも家族への影響を抑えることができるはずなので、どういったものかその内容を確認しておきましょう。
任意整理とは
任意整理とは、弁護士などの専門家が債権者と交渉を行い、将来的に借金から発生する利息をゼロにしたり、月々の返済を楽にしたりすることです。
また、過去に支払った利息の中に利息制限法の上限利率を超えて支払っている場合があります。
このような場合には、利息制限法による引き直し計算を行い、払いすぎた利息については借金の元本に充当して、借金の額を減らします。
自己破産との大きな違いは、
- (1)裁判所での手続きではないこと
- (2)借金がゼロになるわけではないこと
このふたつです。
(1)にあるように、任意整理は裁判所で行う手続きではなく、債権者である金融機関や貸金業者と直接交渉するものです。
そのため、債務者の状況によって和解が成立する条件が異なり、必ず任意整理ができるわけではありません。
また、(2)にあるように、任意整理を行っても借金はゼロにならず、その後の月々の返済が楽になるというものです。
したがって、任意整理を行っても、その後引き続き借金の返済は継続しなければなりません。
もっとも、任意整理前と比較して支払い総額は減少することから、任意整理によるメリットは決して小さなものではありません。
任意整理による家族への影響
任意整理は自己破産と違って、その人が保有している財産に対して差し押さえなどは行われません。
そのため、今住んでいる自宅を明け渡したり、車などの財産を手放したりする必要はないのです。
当然、家族の財産にも影響しませんし、家族が今までどおりに財産を使うこともできます。
また任意整理は、その対象となる借金を自分自身で選択することができます。
この点も、すべての債権者を平等に扱わなければならない自己破産と異なります。
例えば、家族が保証人となっている借金については任意整理の対象から除外することで、保証人に影響が出ることを防げます。
さらに、任意整理は裁判所での手続きではなく、多くの書類を準備する必要もありません。
そのため、家族に知られずに手続きをすることもできます。
どうしても家族に知られたくない事情がある場合には、自己破産より利用しやすい制度ということができます。
まとめ
自己破産をして借金の整理を行う場合、どうしても家族への影響を避けて通ることはできません。
そのため、本来は家族の協力を得ながら自己破産の手続きを進めるべきなのです。
しかし、家族や親族にはどうしても知られたくないという人が少なくないのも事実です。
そこで、自己破産以外の方法で債務整理を行うことも考えておく必要があります。
任意整理は、自己破産に比べて利用にあたっての制約が少なく、家族への影響も最小限にとどめることができます。
自己破産のようにほとんどの財産を手放す必要もないため、その後の生活に対する影響も少なくなります。
ただ、任意整理をすべての人が無条件で利用できるわけではなく、最終的には債権者との和解が成立するかどうかにかかっています。
まずは弁護士などの専門家に、債務整理の方法について相談してみることから始めてみましょう。
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