目次
この記事を読んで分かること
- ・弁護士に交通事故の相談を依頼した場合には(1)相談料(2)着手金,(3)報酬金,(4)実費,(5)日当等の費用項目があることが分かる。
- ・弁護士の報酬体系について(1)旧日弁連相場,(2)タイムチャージ制,(3)成功報酬制の3つの相場について分かる。
- ・弁護士に依頼する際の費用を抑えるための方法が分かる。
- ・弁護士費用を加害者に負担させることができる場合について分かる。
交通事故に遭ってしまい、困っているけれど、弁護士に相談することを戸惑っているという方もいるのではないでしょうか。
また、そのような方のほとんどは、弁護士に支払う費用が高額になるのではないかと心配しているのではないでしょうか。
そこでこの記事では、弁護士費用の費用項目にはどのようなものがあるのか、弁護士費用の相場の決まり方、具体的な例を使った計算方法とともに、どうすれば弁護士費用を抑えられるのかも解説していきますので、是非最後まで読んでください。
弁護士に交通事故相談をした際の費用は?
交通事故で弁護士に依頼すると、弁護士費用がかかります。
では弁護士費用の内訳は、どのような内容になっているのでしょうか。
弁護士費用の項目としては以下の5つが考えられます。
- ・相談料
- ・着手金
- ・報酬金
- ・実費
- ・日当
(1)相談料
相談料とは、弁護士に相談する際にかかる弁護士費用です。
相談料は相談時間に応じて発生することが一般的です。
〇〇分〇〇円などとされる費用体系をとる弁護士事務所が多いです。
1時間当たり5000円から10000円ほどが相場です。
また最近では、初回や事件類型に応じて相談料を無料にしている弁護士事務所も増えてきていますので、確認してみてください。
(2)着手金
着手金とは、弁護士に依頼すると決めた場合に発生する弁護士費用のことです。
着手金は初期費用とも言われており、弁護士の活動のための資金です。
着手金を受け取ってから、弁護士は依頼された案件に着手することになります。
着手金にはこのような性質がありますので、一般的に依頼した案件の結果に関わらず返還されることはありません。
また最近では、相談料と同様、着手金についても交通事故業務に関しては無料としている法律事務所も多くなってきています。
できるだけ初期費用を低く抑えたい方は、着手金を無料にしている事務所への依頼をおすすめします。
他方で、着手金が無料となっていることで、成功報酬は着手金がある事務所よりも高めに設定されている可能性が高いです。
したがって費用項目単体だけで判断せず、全体的な費用を確認してから依頼するか決めるべきでしょう。
こちらも事前に確認しておくべきポイントです。
(3)報酬金
報酬金とは、依頼していた案件が終了した場合に、解決した内容に応じて発生する弁護士費用です。たとえば、交通事故の場合には加害者から回収できた損害賠償金額の〇〇パーセントなどとされる費用体系です。
もし、報酬金額が回収した損害賠償金額の10%の場合に、加害者から1000万円取り戻せたとしましょう。
この場合、税金については度外視して考えると、弁護士の報酬金は100万円ということになります。
ただ、経済的利益がどの部分を指すのかは事務所によって異なります。
たとえば保険会社から100万円の示談を提示されていましたが、弁護士に依頼したことによって最終的に150万円で和解できた場合の経済的利益はいくらでしょうか。
経済的利益を最終的に取り戻した総体としての150万円とするのか、もともと示談として提示されていた100万円は差し引いて経済的利益50万円と考えるのかは、個々の弁護士事務所の料金体制によって異なります。
このあたりも後々疑問が残らないように、事前に調べておきましょう。
(4)実費
実費とは、案件を進めるにあたり実際にかかる費用です。
仮に弁護士に依頼せずに被害者の方がご自身で手続を進めた場合でも、発生してくるものです。たとえば、裁判を起こす場合にかかる、裁判所に収めるための収入印紙や切手代、医師に診断書等を依頼したときにかかる発行手数料、MRIやCT等の検査画像を交付してもらうための手数料や通信費用などが実費にあたります。
(5)日当
日当とは、弁護士が遠方に出張などをする場合に発生する弁護士費用です。
日当は交通費とは別に発生する費用です。
たとえば、弁護士が裁判所に出頭する場合や、遠方の被害者宅や事故現場、被害者が通院している病院に出向いていく場合に発生する弁護士費用が日当です。
日当の相場は,おおよそ1日あたり3万円から5万円程度が多いようです。
一般的には、成功報酬の振込と同時に差し引かれる場合が多いですが、弁護士事務所によっては日当のみ月単位で請求を行う事務所もあります。
支払方法についても、事前に確認しておきましょう。
弁護士に依頼をした際の相場
交通事故で弁護士に依頼した場合には、依頼した弁護士事務所の料金体系や依頼する内容によっても大きく変わります。
まずは費用全体に大きな違いが発生する料金体系の種類を説明していきます。
(1)旧日弁連相場
(1)旧日弁連相場とは、「旧報酬規程」に基づく報酬体系です。
弁護士費用については、以前は日本弁護士連合会という組織が弁護士の費用の基準を一律に定めていました。
全国の弁護士は、その基準に基づいて着手金・・報酬金等の弁護士費用を依頼者に請求していたのです。
このように、日弁連が決めていた基準を「旧報酬規程」あるいは「旧日弁連基準」と呼ばれています。
しかし、2004年(平成16年)に弁護士費用が自由化されて、旧報酬規程は独占禁止法で禁止されました。
そして各弁護士が自由に着手金や報酬金額を決定できるようになりました。
他方で、弁護士費用が自由化されたといっても、各弁護士も急激に弁護士費用を変更することは難しいという実態もありました。
そこで、現在もなお旧報酬規程を参考に、弁護士費用を設定している弁護士も多くいます。
旧日弁連基準は以下のような費用体系に設定されていました。
なお着手金の最低金額は10万円とされていました。
経済的利益 | 着手金 | 報酬金 |
300万円以下 | 8% | 16% |
300万円超3000万円以下 | 5%+9万円 | 10%+18万円 |
3000万円超3億円以下 | 3%+69万円 | 6%+138万円 |
3億円超 | 2%+369万円 | 4%+738万円 |
参考:(旧)日本弁護士連合会報酬等基準
たとえば、加害者から損害賠償金を1000万円回収できた場合
着手金は、1000万円 × 5% + 9万円 = 59万円
報酬金は、1000万円 × 10% + 18万円 = 118万円
弁護士費用の合計金額は、59万円+118万円=177万円となります。
旧日弁連相場では、以下の理由によって依頼者が損をするリスクが成功報酬制の場合よりも高くなることがあります。
1つ目の理由は、示談金額の増額交渉が成功しなかった場合であっても、着手金及び相談料などの弁護士費用を支払わなければならないということです。
2つ目の理由は、ある程度報酬金が固定されているため、費用が高くなりやすいということです。
(2)タイムチャージ制
(2)タイムチャージ制とは、弁護士が依頼を受けた案件に対して、要した時間数に応じて発生する弁護士費用です。
たとえば、1時間あたり〇〇円とあらかじめ決めておき、弁護士がその案件を処理するために要した時間を記録しておき、後日請求するといった体系が一般的でしょう。
タイムチャージ制は、国際的な企業法務や金融法務等を多く手掛ける大手法律事務所で利用されることが多いです。
(3)成功報酬制
(3)成功報酬制とは、案件が終了して、結果が依頼者の経済的利益になった場合に報酬が発生する費用体系です。
依頼者が得た経済的利益の〇〇パーセント、というふうに事前に決められています。
相談料や着手金などの初期費用が無料の場合に、成功報酬のみが発生するという費用体系のことを「完全成功報酬」と呼んだりします。
たとえば経済的利益の10%として弁護士に依頼した場合に、加害者から1000万円回収したようなケースでは,1000万円×10%=100万円が成功報酬になります。
相談料・・着手金が無料の弁護士事務所の場合、成功報酬制の相場は一般的に以下のようになります。
相談料・・着手金は無料 + 報酬金として20~30万円、示談金の10%~20%というのが成功報酬制の相場です。
費用を抑えたい際には、複数の弁護士に相談!
交通事故後の示談交渉や後遺障害等級認定の申請、または調停や訴訟において弁護士に依頼する場合にできるだけ費用を抑えたいと考えるのは普通のことでしょう。
弁護士報酬にはかなりのお金がかかるので、弁護士に依頼せずに解決できるのであればそうしたい,と思う方も少なくないはずです。
しかし、弁護士に依頼することには経済的な利益の拡大に加え、手続を任せられるという心理的な安心という側面もあることを忘れてはなりません。
弁護士費用と利益を比べて、依頼するかどうかを判断するべきです。
ひとくくりに弁護士費用といっても、これまでに説明したようにさまざまな種類の費用項目があることはお分かりいただけたでしょう。
事前にいくらの費用がかかるのかをしっかりと調べて、メリットとデメリットを比較して、利益が多いのであれば弁護士に依頼するべきでしょう。
弁護士事務所によって契約内容は異なりますので,契約の内容次第では予想以上に費用を安く抑えることができるかもしれません。
弁護士に正式に依頼する前に、複数の弁護士事務所を比較して交通事故の弁護士費用の相場や料金システムを調べ、理解して納得しておくことが最も重要です。
着手金の有無により費用の負担感が変わる
着手金がある場合とない場合によって、コストの感覚は大きく変わってきます。
具体的にどういうことか見ていきましょう。
着手金がある場合の費用の負担感
着手金がある場合の弁護士費用は、以下のような費用項目になることが多いです。
- ・着手金:10万円から20万円
- ・成功報酬:経済的利益の10%から15%
具体的ケースにあてはめてみていきましょう。
弁護士に依頼する前に、加害者や保険会社から提示されていた示談の金額が100万円で、弁護士に依頼したことで獲得できた金額が300万円だとしましょう。
この場合、弁護士に依頼することで経済的利益となったのは300万円-100万円=200万円です。
弁護士費用を計算してみます。
着手金:10~20万円 + 成功報酬:経済的利益200万円×10~15%=20万~30万円
これらに実費や日当が加算されます。
したがって,着手金:10~20万円と成功報酬:20万円~30万円に日当と実費がかかってくるという費用体系になります。
着手金がない場合の費用の負担感
次に着手金がない場合の弁護士費用の費用項目を考えてみましょう。
費用項目は以下のようになります。
- ・着手金:0円
- ・成功報酬:10万円から20万円+経済的利益の10~15%
具体的なケースにあてはめてみていきましょう。
弁護士に依頼する前に加害や保険会社から提示されていた示談の金額が100万円で,弁護士に依頼したことで獲得できた金額が300万円だとしましょう。
この場合,弁護士に依頼することで経済的利益となったのは300万円-100万円=200万円です。
計算式は次のようになります。
着手金:0円 + 成功報酬:10万円~20万円 + 200×10%~15%=20万~30万円
これらに実費や日当が加算されます。
したがって,着手金:0円と成功報酬:20万円~30万円に実費や日当がかかってくるという費用体系になります。
より具体的な金額は、依頼したいと考えている弁護士事務所に確認するのがよいでしょう。
費用面で弁護士に依頼するかどうかを迷っている場合には、まずは無料相談を利用しましょう。
無料相談を利用すれば、弁護士が大体の見積もりを出してくれますので必要になる費用を把握することができます。
無料相談の際に見積もりをしてもらい、増額の見込みがない場合には弁護士は正直に教えてくれます。
なぜなら、弁護士の費用も依頼者の回収できる経済的利益に応じて報酬が決まってきますので、あまり増額が見込めない案件を受任しても弁護士の利益にならないからです。
どの程度増額の見込みがあるかもケースバイケースですので、まずは弁護士に無料相談で見積もりを出してもらうべきでしょう。
弁護士費用を加害者負担にするには
それでは、弁護士を依頼したことによる費用を加害者に負担してもらうことはできるのでしょうか。
原則として、裁判費用は敗訴側が支払うルールです。
民事訴訟法61条には「訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする。」同法62条には、「裁判所は、事情により、勝訴の当事者に、その権利の伸張若しくは防御に必要でない行為によって生じた訴訟費用又は後遺の時における訴訟の過程において相手方の権利の伸張若しくは防御に必要であった行為によって生じた訴訟費用の全部又は一部を負担させることができる」と規定しています。
裁判にかかる費用とは、「弁護士費用」や印紙代や書類作成費用や日当等の「訴訟費用」です。
これらは原則として、敗訴した側が支払というルールになっています。
したがって交通事故の弁護士費用を加害者側に請求できるのは、加害者との示談がうまくまとまらず、紛争が裁判に進展し、被害者が加害者に勝訴した場合ということになります。
最終的に被害者が回収した損害賠償金の10%を弁護士の費用として、加害者に請求することができます。
訴訟費用に関しては裁判で勝訴すれば、全額を加害者に請求することができます。
裁判費用は原則として敗訴側が支払うのですが、実務上はまず裁判を提起する被害者側が支払う必要があります。
裁判で勝訴した場合には、被害者が負担した弁護士費用も含めた賠償金を加害者に振り込んでもらうという流れになります。
まとめ
以上いかがだったでしょうか。
今回は弁護士に依頼する場合の費用項目や、弁護士費用の相場が決まる基準を説明してきました。
交通事故に遭って弁護士に依頼仕様とする場合には「弁護士費用特約」を利用することで、弁護士費用の被害者の負担を実質的に0円にすることができます。
弁護士費用特約の適用は被害者のみに限りません。
弁護士費用特約の適用範囲は広く保、険契約者と同居している家族や別居している未婚の子どもや同乗者等契約している保険会社によって違いがありますので、自身の約款をみて確認してみてください。
弁護士に依頼する前に、弁護士特約の適用がないか調べておくことをおすすめします。
保険会社は最大300万円まで弁護士費用を被害者にかわって負担してくれます。
保険会社としてはできるだけ弁護士特約を利用してほしくないため、過失割合が0の場合しか利用できないとか、もっともめているようなケースですか利用できないなどと言ってくる可能性があります。
しかし、弁護士特約は基本的に被害者であれば過失割合や示談状況によって使えないということはないため、約款をきちんと確認しておきましょう。
納得のいく示談にするためにも、交通事故に詳しい弁護士に依頼するようにしましょう。
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