目次
この記事でわかること
- ・後遺障害認定で非該当とされる理由と対策を知ることができる。
- ・むちうちで後遺障害認定を受けられるケースがわかる。
- ・後遺障害認定に対する異議申し立ての手続きについて知ることができる。
交通事故による負傷で後遺症が残った場合、後遺障害認定の申請を行なうのが通常です。
しかし、後遺障害認定の申請をしたからといって必ず認められるわけではありません。
申請内容によっては、後遺障害に認定されないケースもあります。
特に交通事故でむちうちになった場合、後遺障害に認定されない場合が多いです。
この記事では、後遺障害に認定されない理由とその対策方法について詳しく見ていきます。
また、後遺障害に対する異議申し立ての手続きについても解説していきます。
後遺障害の認定について具体的に知りたい人は、この記事を参考にしてみてください。
後遺障害認定で非該当とは?
後遺障害認定を申請したときに出る「非該当」とは、後遺症が後遺障害に認定されないことです。
交通事故の被害者が後遺障害認定を申請した後、「損害保険料率算出機構」という機関がその内容を審査します。
その後、自賠責保険会社が上記の審査結果を下に、後遺障害認定を出すか否かの判断を下すのです。
申請者の提出した書類の内容から、負傷の症状や診断の根拠の乏しさがある場合、自賠責保険会社から後遺障害には、程度によって該当しないと判断されるケースもあります。
また、提出書類の記載内容に矛盾点や不整合性がある場合も同様です。
後遺障害認定を申請して認めてもらうには、非該当となりやすい要因を把握しておくことが大切です。後遺障害認定の申請をする際、症状の証明が不十分だと後遺障害に認定されないケースが多くなります。
治療のための通院回数が少ない場合も同様です。
また、交通事故の負傷の中でもむちうちの場合、後遺障害に認定されないケースも少なくありません。
そのため、むちうちで後遺障害認定が認められるケースについても知っておきたいところです。
症状の証明が不十分な場合
後遺障害に認定してもらうためには、後遺症の症状を明確にする必要があります。
そのため、被害者側で行なう症状の証明が不十分である場合、後遺障害認定を申請しても、非該当の結果が出てしまうこともあるのです。
症状の意味には、被害者の自覚症状と他覚的所見の存在の双方を含みます。
そこで、自覚症状および他覚的所見の存在の証明が不十分である場合の例と、その対策について解説していきます。
漠然とした内容の痛みを医師に説明するだけでは不十分
後遺障害認定の申請を行なう際、後遺障害診断書を提出します。
後遺障害診断書とは、被害者の負傷部分に残った後遺症の具体的な症状を証明する書類のことです。
下記の画像が、後遺障害診断書です。
引用元:https://www.kouishogai.com/certificate/about.html
後遺障害診断書の内容は、後遺障害の該当性を判断する上で重要になります。
後遺障害診断書は、医師が記載します。
そのため、事前に医師が被害者の自覚症状を具体的に把握できるようにしておかなければなりません。
たとえば、交通事故に遭って被害者がむちうちになり、首に痛みを感じるようになったとしましょう。
その際、漠然と「首が痛い」と説明しただけでは、医師もその具体的な症状を把握できません。
上記の状況で医師が作成した後遺障害診断書も、症状を証明するには乏しい内容のものになってしまいます。
それにより、後遺障害認定を申請しても認定されない結果となってしまうのです。
後遺障害認定を受けられる程度に自覚症状の存在を明確にするには、その症状を医師に対して具体的に説明することがカギになります。
医師に対して自覚症状を具体的に説明する際、以下の点を意識するといいでしょう。
症状に関してできるだけ多くの情報を提供する
医師に自覚症状を説明する際、できるだけ多くの情報を提供することが大切です。
たとえば、むちうちで首に痛みが生じた場合、痛み出した時期について提供したほうがいいでしょう。後遺障害認定を受けるには、交通事故と後遺障害の因果関係の証明が必要になります。
そのため、交通事故に遭ってむちうちになり、それ以降に首が痛み出したことを明確にしておくと、後遺障害認定を受けやすくなります。
また、自覚症状が出る頻度や期間に関する情報も提供したほうがいいでしょう。
負傷による後遺症が重いものであるほど、後遺障害認定が出る可能性も高くなります。
自覚症状が出る頻度や期間に関する情報を提供することで症状の重度が証明しやすくなり、その分後遺障害認定を受けやすくなるのです。
症状に変化があったときはその都度伝える
交通事故の負傷で生じる自覚症状は、常に一定ではありません。
時間の経過とともに症状が変化することも多いです。
たとえば、むちうちになった後、一定期間経過後に首の痛みが強くなったり、腰の痛みも併発したりすることもあります。
また、むちうちになった後、首のまわりが重く感じるようになったり、手や足の指にまひが出たりするケースも少なくありません。
もし、上記のような自覚症状の変化が生じた場合、もれなく医師にその旨を伝えることが大切です。
それにより、医師が後遺障害診断書を作成する際、被害者の自覚症状の内容をより正確に記載できるため、後遺障害認定を受けられる可能性も高くなります。
他覚的所見の存在の証明が不十分とは検査で異常なし
他覚的所見とは、各種検査結果に基づいて出される医師の医学的見解のことです。
後遺症の自覚症状の他、他覚的所見の存在が証明されると、後遺障害認定が出る可能性も高くなります。
一方、後遺症に対する他覚的所見が認められない場合、後遺障害の要件に当たらないとされて認定されないケースも少なくありません
他覚的所見が認められないとは、たとえば、交通事故で骨折してレントゲンの画像検査を行なった際、骨の変形や関節の神経障害などの症状が確認できない場合が該当します。
レントゲン、MRI、CTなどの画像検査で他覚的所見が認められない場合、後遺障害認定を受けるための証明力が弱くなります。
そのため、他の検査方法によって、後遺障害に該当する旨の証明をしていかなければなりません。
後遺症に他覚的所見の存在が認められない場合、下記の検査を行なって対応するのが通常です。
スパーリングテスト
スパーリングテストとは、神経学的テストの一つで神経根に障害が生じているか否かを調べる検査のことです。
テストを受ける人が座った状態で頭を後ろに倒して左右に傾けた状態にした後、テストをする人が頭を上から押さえつけます。
それにより、神経口の出口が狭くなって、テストを受ける人の神経根に障害があって、しびれや痛みが生じているか否かを確認することができるのです。
ジャクソンテスト
ジャクソンテストもスパーリングテストと同様、神経根の障害を調べる神経学的テストの一つになります。
テストを受ける人が座った状態で頭を後ろに倒した後、テストをする人がその頭を上から下に押し下げる方法で検査を行ないます。
上記の行為により、テストを受ける人の神経根の出口が狭くなるため、しびれや痛みの症状を確認できるのです。
ジャクソンテストとスパーリングテストは、テストを受ける人の頭を押さえる方向が違うだけで、検査の要領は同じになります。
したがって、ジャクソンテストはスパーリングテストと一緒に行なわれるのが通常です。
筋萎縮・腱反射のテスト
筋萎縮テストとは、筋肉が萎縮して細くなっているか否かを確認するテストです。
神経障害が生じている場合、その部分の運動能力が低下して、筋肉の使用する頻度も少なくなります。
それにより、筋肉の萎縮が生じてしまうのです。
腕、肩、足などのまわりを測って筋萎縮が確認された場合、神経障害の存在を疑います。
また、腱反射テストとは、後遺症が疑われる体の部位の神経を直接刺激して、異常な反射が見られるか否かを確認するテストです。
神経障害が生じている場合、神経を刺激した際に腱反射が通常より強く反応したり、弱く反応したりします。
通院回数が少ない場合
交通事故の被害者が加害者に請求できる入通院慰謝料の相場は通院期間や回数で決まるため、通院回数によってその金額も変わってきます。
そして、後遺障害の認定要件を満たしているか否かを判断するにおいても、申請者の通院回数が考慮されるのです。
申請者の通院回数が少ないと、後遺障害認定で非該当とされてしまうケースもめずらしくありません。
そこで、通院回数が少ないと後遺障害認定を申請しても認定されないことがある理由およびその対策方法について解説していきましょう。
通院回数が少ないと症状が軽いと判断される
通院回数が少ないことにより、後遺障害認定で非該当とされてしまう理由は、症状が軽いと判断されるからです。
後遺障害の認定基準は、自動車損害賠償保障法施行令の等級別の表に定められています。
症状が重度である場合、上記の要件に該当するケースが多いですが、軽度である場合は要件に該当しないとされやすくなります。
また、負傷の症状が重度なものである場合、通常長い期間治療を継続するのに対し、軽度のものであるときは、治療期間も短く済みます。
したがって、通院回数が少ないと、負傷の症状が後遺障害の認定基準に該当するほど重度なものではないと判断されます。
それにより、後遺障害認定の申請をしても、通院回数が少ないことを理由に認定されない結果となってしまうのです。
交通事故による負傷を治療する際、後遺障害認定を受けることを視野に入れながら通院することが大切だと言えます。
医師の指示や判断にしたがって適切に通院して治療する
後遺障害に認定されないという結果を避けるためには、医師の指示や判断にしたがって適切に通院して治療しましょう。
交通事故に遭って負傷した場合、その程度によっては、治療のために頻繁に通院する必要はないと判断してしまう人も少なくありません。
仕事が忙しくて時間が取れずに、通院回数が少なくなってしまうケースもあるでしょう。
このような事情がある場合、後遺障害認定を申請しても、被害者側に不利な判断をされてしまう可能性が高くなります。
一方、医師の判断にしたがって通院による治療を続けたという事実があれば、後遺障害認定の判断の際にも有利に働くでしょう。
また、仕事が忙しくても時間を作って通院による治療を続けたという事実があれば、後遺障害認定の判断の際、症状はある程度重度なものだと判断される可能性もあります。
適切な通院による治療の継続が、後遺障害認定の獲得につながることをしっかり理解しておきたいところです。
交通事故で負傷した場合、医師の指示や判断にしたがった上で、週1~2回くらいのペースで通院して治療を行なうのが好ましいでしょう。
むちうちで後遺障害認定が通るケース
後遺障害認定で非該当とされないようにするには、認定されるケースを把握しておくことが大切です。
交通事故での負傷の中でもむちうちは、後遺障害に認定されない場合が少なくありません。
むちうちによる後遺症で後遺障害が認められるのは、通常「局部に(頑固な)神経障害を残すもの」の要件を満たす場合です。
そこで、むちうちで後遺障害認定がされるケースについて、具体的に見ていきましょう。
むちうちによる神経障害が医学的に証明できる場合は12級が認定される
後遺障害等級表の12級13号には、「局部に頑固な神経障害を残すもの」と定められています。
「頑固な」とは、画像検査などの他覚的所見により、症状を医学的に証明できるケースのことです。
むちうちが上記のような症状の場合、後遺障害12級の認定を受けられる可能性があります。
後遺障害12級に認定されるためには、検査の画像で神経障害が明確に確認できることが必要です。
また、上記画像上で確認できる症状が、医師の初診結果や神経学的な検査の結果と一致していることも求められます。
その他、検査画像で認められる症状が、交通事故による外傷が原因だと確認できる場合、後遺障害12級に認定される可能性が高くなります。
むちうちによる神経障害が医学的に説明できる場合は14級が認定される
後遺障害等級表の14級9号には、「局部に神経障害を残すもの」と定められています。
これは、交通事故が原因でむちうちによる神経障害が生じていることを、医師の診断や検査などから医学的に説明できるという意味です。
また、むちうちによる神経障害の症状が、交通事故当初から治療の症状固定まで、連続的に生じていることも必要です。
その他、神経障害の症状の重篤性、交通事故の規模と神経障害の症状の因果関係性も、後遺障害14級の認定において考慮されます。
むちうちによる後遺症が、上記の要件をすべて満たす場合、後遺障害14級が認定されます。
後遺障害認定に申し立てをする場合の手続き
交通事故の被害者が後遺障害認定の申請をした後、審査機関から下された「非該当」という判断に納得できない場合も少なくありません。
もう一度しっかり審査してほしいと思う人もいるのではないでしょうか。
後遺障害認定の申請後、審査機関の判断に納得できない場合、異議申立をして再審査を請求することが可能です。
再審査によって後遺障害の要件を満たしていると判断されれば、等級認定を受けられます。
そこで、後遺障害認定に対する異議申立の手続きについて見ていきましょう。
異議申し立ては保険会社経由で行なう
後遺障害認定に対する異議申し立ての手続きには、「事前認定」と「被害者請求」の二つの方法があります。
この点は、後遺障害認定の申請手続きの方法と同様です。
事前認定とは、加害者側の任意保険会社を経由して行なう異議申立の手続きを言います。
一方、被害者請求とは自賠責保険会社を経由して行なう異議申立の手続きです。
異議申立の手続きの回数制限は定められていません。
そのため、何回でも異議申立をすることが可能です。
どちらの方法で異議申し立ての手続きを行なった場合でも、保険会社経由で自賠責損害調査事務所へ書類が送付され、そこで審査がなされます。
自賠責損害調査事務所とは、損害保険料率算出機構が自賠責保険の損害調査を行なう目的で各地に設置した調査事務所のことです。
自賠責損害調査事務所が行なう審査で後遺障害の存在を認めてもらうためには、その根拠となる医学的証拠の存在が必要です。
そのため、異議申立をする際、医学的証拠となる診断書や医師の意見書などを提出しなければなりません。
自賠責損害調査事務所は、異議申立の審査を行なった後、加害者側の任意保険会社または自賠責保険会社に対してその結果を報告します。
そして、上記の各保険会社から異議申立をした被害者に対して、審査結果の通知がなされるのです。
まとめ
後遺障害認定の申請を行なっても、審査機関の判断でその旨に該当しないと判断されてしまうケースもあります。
症状の証明が足りなかったり、通院回数が少なかったりとその理由は様々です。
交通事故でむちうちになった場合、非該当とされてしまうケースが多いため、対策をしっかりした上で後遺障害認定の申請をすることが大切です。
もし、対策を講じた上で後遺障害認定の申請をしたにもかかわらず、審査機関から「非該当」の判定がなされてしまった場合、異議申立の手続きをしましょう。
症状が後遺障害に該当する旨の医学的証拠を提出することで、後遺障害認定を出してもらえるケースもあります。
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