債務整理はそれぞれ方法・期間・費用が異なります。
ここでは「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類における手続きの流れと、各方法におけるおおよその期間を説明します。
債務整理の流れ<任意整理>
任意整理はまず、依頼した弁護士が債権者に対し受任通知を送ります。受任通知を受け取った債権者はこれ以降公的な方法を除き,債務者に対し督促を行うことができなくなります。(新貸金業法21条1項9号)
受任通知は、「債務者が弁護士に対し任意整理を依頼した」等の趣旨と、今後の交渉はすべて弁護士が行い、取引履歴の請求を伝えるために債権者へ送られます。
その後、弁護士が取引履歴を基に借入残額の計算を行います。利息制限法の利率に違反してないか、時効が発生している借金が存在していないかを明らかにし、債務額の合計を確定します。もしここでマイナスになった場合、過払い金が発生しているので返還請求を行うことが可能です。
真に払うべき債務額が決定した場合、弁護士は依頼者に月々返済額を積み立てるように指示をします。これは月々の返済が本当に可能か判断するために必要なことです。
ここでの月々の返済額は毎月の収入から生活費や娯楽費を引いた無理のない支払い可能額を指します。
この予行練習を失敗してしまうと、月々の安定した返済が不可能と見なされ任意整理を行うことができなくなるので必ず返済を行うようにしましょう。
数か月の予行練習が終了し、確実に返せる返済計画ができた時点で弁護士は業者と交渉を行います。
交渉は債務者・債権者双方の意見を聞き利息の減額や、長期分割払いの提案を行います。
双方が合意に至れば、和解が成立します。和解が成立した時から3年間にわたる返済が開始となります。
以上が大まかな任意整理の流れとなります。
任意整理の際にかかる弁護士の費用としては、債権者1社あたり四万円程度と言われています。弁護士事務所によっては分割払いに応じてくれる場合もあるため、相談をしてみるとよいでしょう。
債務整理の流れ<個人再生>
個人再生は自分で裁判所への申し立てを行うことが可能です。
しかしながら、裁判所から数多くの書類提出を命じられるため、一般的には弁護士抜きで個人再生を利用するのは難しいと言われています。もしも裁判所が求める手続きに対応できなければ、それまでの手続きが無駄になってしまう可能性があります。
弁護士に依頼を行わない場合、裁判所から個人再生委員が選任されます。個人再生委員とは、申立人の財産や収入を調査し、申立人が再生計画案通りに支払いを行えるか判断します。地域によって異なるのですが、おおよそ費用は15万~20万円と言われております。東京都では弁護士がいたとしても個人再生委員が選任されますが、地方によっては依頼した弁護士が個人再生委員の役割を担う場合もあるようです。
個人再生の利用手順として、初めに地方裁判所へ申し立てを行います。この際必要となる書類は申立書・収入一覧および主要財産一覧・債権者一覧表・委任状などです。
また、住宅資金貸付債権に関する特約を利用する場合は、利用する旨の申立も同時に行います。
申立が受理されると、個人再生委員が選任される場合があります。その個人再生委員が、債権の調査や財産の調査を行い、「再生手続開始決定」を出すか否かについて裁判所に意見を提出します。それを基に裁判所は再生手続開始を認めます。
なお、個人再生委員が選任されてない場合は、申立人から直接審尋を行い再生手続開始を判断します。裁判所によっては、審尋が行われないこともあります。
再生手続開始が決定すると、個人再生委員との面談が行われます。ここでは、個人再生委員から申立人や申立代理人に対し様々な質問が行われます。
それと同時に再生計画が認められるまでの間、申立人は個人再生委員に対し毎月の返済予定額を支払い続けなければなりません。期間は6か月間程ですが、この支払った金額の一部が個人再生委員の報酬となります。
途中で支払いが滞ってしまう場合、月々の返済は不可能と判断され手続きそのものが廃止となってしまうので注意しましょう。
その後、問題がなければ再生計画案が提出となり、債権者等から意見を聴聞し再生計画案が許可されます。
認可がなされてからおよそ一か月後に再生計画案が確定となり、借金が減額されます。
以上が大まかな流れです。
個人再生を弁護士等に依頼する場合に、費用が高くかかる場合があります。裁判所とのやり取りを含め、すべて代理人として行ってくれる弁護士であれば30~50万円。必要な書類のみの作成を行う司法書士であれば20~30万となります。
債務整理の流れ<自己破産の申し込み>
自己破産は弁護士に依頼した場合、必要なことはすべて対応してくれます。依頼を行わない場合は書類作成から財産調査等の作業をすべて一人で行う必要があります。
自己破産を行う際には、地域の裁判所へ「破産申立書」の提出が必要となります。その他の添付書類として住民票・陳述書・債権者一覧表・財産目録・家計簿等が必要となります。
裁判所へ申立てを行えば、1~2か月の間に「開始前審尋」のため裁判所に出頭するよう命じられます。開始前審尋とは、担当裁判員が申立人と面談を行い破産に至った経緯を聴取を行うことです。その結果から申立人が支払い不可であると判断された時は、破産手続開始決定がなされます。この際に「同時廃止事件」か「管財事件」のどちらに該当するかを決定します。
破産手続開始決定は官報公告の日から2週間で確定し、その時点から申立人は破産者となります。
なお、開始前審尋が行われるまで1~2か月の期間を必要すると書きましたが、弁護士に代理を依頼した場合「即日面接」があり、申立を行った当日に破産手続開始決定が認められるケースもあります。
破産開始手続決定が認められた後は、「破産手続」と「免責手続」を目的とし手続きが進められます。
破産手続は債権者のために財産等を清算する手続きであり、免責手続は債権者のために債務の支払い義務を無くす手続きのことです。
自己破産の種類
自己破産の申し立てを行う際に「管財事件」と「同時廃止事件」のどちらに該当するか理解しておく必要があります。
資産が20万円程度あり、免責不許可事由の疑いがある場合は管財事件となります。その一方で、破産管財人を雇う資産がなく、免責不許可事由ではない時には「同時廃止事件」がとられます。
管財事件の場合、破産管財人が申立人の資産調査し債権者へ財産を配分する破産手続を行うため、同時廃止事件と比較すると期間を長く必要とします。
場合によっては、1年以上かかることもあります。
同時廃止事件は、財産が無いので債権者のために清算を行う破産手続がなく、破産手続が開始と同時に終了します。清算する財産が無いことが明らかなので破産管財人を選任する必要がありません。
また、期間が短く半年程度で解決する場合もあります。
債務整理の流れ<破産手続後の流れ>
同時廃止事件の場合、配当を行う財産が無いため破産手続が開始と同時に終了します。その後、免責を行うために債権者から意見を聞いたり、破産者本人から事情を聴取します。この免責審尋をふまえ、裁判所は免責を認めるか否かの判断を下します。債権者が不服を申し立てなければ免責許可が決定され、債務の支払い責任が免除されます。
管財事件の場合、破産管財人が選任され破産手続が継続します。破産管財人は破産者の財産調査や免責不許可事由の確認を行い、裁判所で行われる債権者集会において報告や説明を行います。債権者集会における報告を基に、裁判所は破産手続を終了します。財産が債権者へ配当される場合を「破産手続終結決定」、配当すべき財産が無く終了する場合は「破産手続廃止決定」と呼ばれます。債権者集会では同時に免責審尋も行われ、それを基に裁判所は免責許可の判断を行います。
弁護士費用として、管財事件の場合は35万~40万円、同時廃止事件の場合は25万~30万円程度が目安となっています。