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相続といっても状況によって対応する専門家が違います
相続にあたって、様々な手続きがあります。また、その状況も千差万別で、対応できる専門家も変わってきます。必要な事柄を適切な専門家に相談・依頼しないと、時間やお金の無駄が出てきてしまうのです。そうならないためにも、相続の手続きの各課程で相談するべき専門家は誰なのか、説明していきます。
公正証書遺言の作成をしたい場合
被相続人の意思を最も確実に反映できる手段が、「公正証書遺言」です。「公正証書遺言」の作成・保管は、「公証人」に依頼しましょう。
公証人とは、私的な問題に立ち会って公文書を作成する法律の専門家であり、長年にわたって弁護士などの法律に携わる仕事をしていた人の中から法務大臣が任命します。公証人によって作成された書類は「公正証書」と呼ばれ、高い証拠能力が認められます。
遺言書作成を依頼する際には、戸籍謄本、住民票、実印、印鑑証明書、登記事項証明書、固定資産税の評価証明書などが必要となります。事前に準備しておきましょう。また、公正証書遺言の作成に必要な2名以上の証人については、適当な人がいない場合には公証人に紹介してもらうこともできます。
依頼するには、最寄りの公証役場に直接出向きましょう。遺言者が病気などの理由により外出できない場合には、出張を求めることも可能です(ただし手数料等がかかります)。最寄りの公証役場は、日本公証人連合会ホームページ(http://www.koshonin.gr.jp/index2.html)からご確認ください。
なお、公正証書遺言の作成にかかる料金は財産価格に応じて増額されます。
不動産の登記名義を変更したい場合
不動産の容器名義を変更する際は、弁護士を利用することも可能ですが、司法書士に相談するのがよいでしょう。登記手続きは、法務局に窓口に問い合わせたり専門書を参考にしたりしながら自分で行うことも可能です。しかし、こうした手続きは手間も時間もかかるので、時間のない人や自分で作成する自信のない人は司法書士に相談するのも一案です。依頼する司法書士に心当たりがなければ、各地の司法書士会で紹介してもらうこともできます。
司法書士とは、不動産の名義変更を扱う専門家です。登記や供託に必要な書類の作成や、その手続きの代行が主な役割となっています。司法書士は相続においても、土地や建物などの不動産の名義変更の手続きを請け負います。
税理士や行政書士は不動産の登記変更を業務として行うことができないので、注意が必要です。弁護士がこうした業務を行うことは違法ではありませんが、専門的に行えるかどうかは人によって違います。
司法書士に依頼する際には、スムーズに進めるため、あらかじめ必要書類をそろえておくとよいでしょう。たとえば、遺産分割協議がまとまっている場合は、戸籍謄本・戸籍の附票の写し、相続人全員の実印と印鑑証明書、固定資産税の評価証明書などが必要です。必要書類は司法書士に集めてもらうこともできますが、手数料がかかります。
登記の報酬金額はそれぞれの司法書士によってことなります。依頼の際には、まずは見積もりを取って検討することをおすすめします。
相続人同士で揉めている場合
相続に伴ってトラブルが発生してしまった場合には、弁護士に相談するのがよいでしょう。
ご存知の通り、弁護士はあらゆる法律問題を扱う、いわば「法律のプロ」です。弁護士が行う業務のうち相続に関わるものは「遺言書の作成と執行」と「相続トラブルの解消」の2つです。ここでは、トラブルの解消の業務について説明します。
遺産分割が滞ってしまう場合や、被相続人の負債が大きく、放棄したい場合、遺言により侵害された遺留分の返還を請求したい場合など、様々なトラブルが発生してしまった場合には、弁護士に相談することで対処することができます。弁護士には守秘義務があるので、遺産などのプライベートな内容も安心して話すことができます。相談の際には、できるだけ早い時期に、事実を正確に伝えることが重要です。
弁護士を選ぶ上では、全国の弁護士会に問い合わせて紹介してもらうこともできます。しかし、弁護士にはそれぞれ得意分野があるので、できれば税理士などからの紹介を受けるとよいでしょう。
なお、費用は相談料30分ごとに5000円~、遺言書作成10万~20万円が目安となります。
相続税の申告を依頼したい場合
相続税の申告は、税理士に相談するのがよいでしょう。
税理士は税務の専門家で、納税者の申告・納税を補助します。税務代理や税務書類作成、納税にかかわる相談などを業務としています。相続に際しては、相続税の申告のほか、それ以前の段階として、相続財産の内容や法定相続人の整理、相続の破棄や限定承認の選択などのアドバイスや、遺産分割協議書の作成を行います。
相続税の申告はかなり複雑であり、自分では十分注意したつもりでも些細なミスで多額のペナルティを課される恐れがあります。財産や相続人が多い場合は特に、税理士に依頼するのが無難でしょう。また、有利な納税方法をアドバイス受けることもできます。後日、納税調査が入った場合にはこれに立ち会い、対応させることも可能です。
税理士に依頼する際は、早い時期に相談することが大切です。各地の税理士会に紹介を求めることもできますが、できれば相続に明るい税理士を選びましょう。登記事項証明書、固定資産税の評価証明書、預金通帳など、財産内容がわかる書類を持参しておけば、より具体的な助言が得られます。
なお、税理士への報酬は税理士によって異なるほか、遺産総額などの条件によっても変わるので、依頼の際には報酬についても確認しておくようにしましょう。
まとめ
以上のように、一口に「相続の相談」といっても、相談すべき相手はその事柄によって変わってきます。さらに、「弁護士」、「税理士」と同じ名前でくくられていても、それぞれが得意とする分野は異なっています。信頼できる人から紹介を受けたり、よく調べたりして、自分が相談したい内容にあった職種の、その中でも相談したい分野に明るい専門家を見つけてください。
できる限り早期に専門家に相談する、事前に必要書類を用意するなどの工夫をして、相続をスムーズに進めましょう。