法律的手段を用いることで、借金を減額、または支払いを免責することができるのが「債務整理」です。
それでは、いったいどのくらいの費用が実際にはかかるのでしょうか。
債務整理の4つの方法、「任意整理」、「特定調停」、「個人再生」、「自己破産」のそれぞれで必要となる費用についてご説明します。
任意整理において
任意整理とは、裁判所を介さず、直接各金融業者と交渉を行って将来利息や遅延損害金などの免除を要求する方法のことです。
そのため、ここでは個人ではなく、法律の専門家である弁護士や司法書士に依頼をするケーズが多いため、実際に必要となる費用は、そうした専門家への依頼料となります。
司法書士の場合は、日本司法書士会連合会によって、「債務整理事件における報酬に関する指針」が制定されています。
その中で、「任意整理事件を受任したときは、定額報酬として債権者一人当たり5万円を超える額を請求し、又は受領してはならない」と規定されています。
ですから、司法書士に依頼した場合には2万円から5万円が相場となっています。
ちなみに、この相場は債権者である金融機関1社当たりでの金額であるため、複数の会社に対して交渉の依頼を行うと、その分が加算されます。
弁護士の場合は、司法書士の場合とは異なり、明確な基準などがありません。
着手金を4万円ほど取る事務所や成功報酬などのみを費用とする事務所など、その料金形態は多種多様です。
そのため、弁護士に依頼を行う際には、いくら程度の費用がかかるのかをしっかりと確認しましょう。
特定調停において
特定調停とは、裁判所で調停委員を介して各金融業者と交渉し、債務の減額や毎月の弁済額の減額、利息の免除などの条件で和解を組む手続きのことをいいます。
特定調停は、他の債務整理の方法と比較すると、非常に安く行うことができます。
実際に必要となる費用は、相手方(債権者)1社なら印紙代500円、切手代420円で済みます。
しかし、手続きが煩雑で申立人の負担が大きいことなどから、申立件数は減少しています。
そうした煩雑な手続きをサポートするのが弁護士や司法書士です。
弁護士に依頼を行った場合、債権者1社当たり2万円~3万円程度が一般的です。
しかし、そこに別途、着手金や簡易裁判所に出頭した場合の日当などを含めるため、最終的には20万円~30万円の弁護士報酬が相場とされています。
司法書士の場合は、弁護士報酬よりも割安にはなりますが、簡易裁判所への出頭や同行の場合は、1日当たり1万円の日当を設定している司法書士事務所もあります。
そのため、無料相談などの機会を利用して、事前にいくら費用がかかるのかを調べることが大切です。
個人再生において
個人再生とは、裁判所を介して、すべての債務のうち一部を免除してもらい、残りの債務を3年から5年かけて分割で弁済する手続きのことをいいます。
個人再生では、専門家への依頼料のほかに、裁判所に納めなければならない費用が存在しています。
まずは、裁判所に納める費用についてご説明します。
裁判所に納めるものとしてまず、個人再生の申し立てを行う申立書に必要な収入印紙代が約1万円かかります。
次に、個人再生が適用された場合に、官報にその旨を掲載する費用として1万2千円必要です。
そして、個人再生を行うための個人再生委員に人件費を支払わなければなりませんので、それが大体25万円となっています。
それでは、弁護士への依頼料はどうなっているのでしょうか。
個人再生を弁護士に依頼した場合、半年ほどの期間に渡る業務となるため、着手金が約30万円かかります。
高額に思われるかもしれませんが、書類作成から裁判所への申立て、裁判所とのやり取りの代理人まで弁護士が請け負う業務が多いことから、妥当な金額であると考えられます。
着手金に加えてかかってくるのが、成功報酬です。
成功報酬の相場は約10万円だといわれています。
ちなみに、弁護士に依頼した場合は、個人再生委員の作業の代理を委託することができるため、個人再生委員の報酬を約15万円まで減額することが可能です。
一方の司法書士では、司法書士費用として、20万円~30万円が相場だとされているため、弁護士に依頼するより依頼料は安く抑えられることができます。
しかし、裁判所でかかる費用が弁護士よりも高くなってしまうのが、司法書士に依頼することの難点です。
前述の通り、弁護士には個人再生委員の代理ができる分、裁判所に納める費用を抑えることができますが、司法書士にはその権限がありません。
また、司法書士は140万円を超える債権の案件を取り扱いことができないため、大幅な借金の減額を望むことが可能な個人再生において司法書士は適切でないかもしれません。
自己破産において
自己破産とは、裁判所を介して、すべての債務を免責してもらう手続きのことです。
結果的にはすべての債務をなくすことができますが、同時に保有している資産を清算する必要があります。
まず、自己破産において必ずかかる費用が裁判所へ納める費用です。
こちらは、特に財産などがない同時廃止事件の場合には、裁判所費用は収入印紙代や予納金などを含めて約2万円程度となります。
それでは、弁護士や司法書士に依頼した際の費用について見ていきましょう。
弁護士に依頼した場合、東京弁護士会に第一東京弁護士会と第二東京弁護士会が運営している弁護士会法律相談センターのクレサラ報酬基準によると、着手金が21万円以内で報酬が21万円以内の合計42万円ほどが必要な費用となります。
一方の司法書士は、司法書士法第3条1号4号にもとづいて、「書類作成代理人」として自己破産申立書を作成する業務しか行えず、代理人として活動ができないため、依頼料の相場は約20万円といわれています。
一見すると、弁護士よりも司法書士の方が安く済むように思われますが、債務者に一定の財産(20万円以上)がある管財事件になった場合には、弁護士が少額管財といって安い費用で破産手続きができるため、弁護士に依頼した方が費用を抑えられます。
まとめ
このように、各債務整理の方法によっては、弁護士に依頼した場合と司法書士に依頼した場合で、大きく費用が異なります。
自分の債務状況から、まずはどの方法をとったらいいのかを考え、その上で、どの専門家に依頼することが最善なのか、慎重に見極めることが重要です。