日常生活を送っている場合でも、家族や友人、知人などが突然逮捕されてしまうことがあります。ご家族や友人が逮捕されたら「今後どうなるのか?」「自分に何かできないか?」と、考えておられる方も多いでしょう。どうしていいか分からずに過ごしているうちにも自分の身近な人は身体拘束され、刑事手続きは進んでいきます。
逮捕後は、決められた流れで捜査が行われ、おおよそ決まった日数で結果が出ることとなっています。そこで、ここでは、身近な人が逮捕された後どうすればいいのか、また、逮捕された後はどのような流れで刑事手続きは進んでいくのかをご紹介します。
目次
一刻も早く弁護士に連絡することが大切?
自分の家族や友人・知人が逮捕されてしまった場合、どのような容疑で逮捕されたかにもよりますが、いきなり有罪とされて刑罰が下されることはありません。そのため、逮捕を知った時はまず、気を落ち着かせましょう。焦っても良い結果は生まれないので、まずは冷静になることが大切です。
もちろん、いずれは犯した罪相応の刑罰が下るかもしれないと覚悟するべきですが、逮捕された時点では、まだ推定無罪だということも理解しましょう。「逮捕された」≠「有罪」ということが頭に入っているだけでも、冷静になれるかもしれません。
逮捕されたのが自分自身の家族だとしたら、まず一番にすることは弁護士への相談です。
時間が経つにつれて弁護士ができることも少なくなっていきますので、なるべく早い段階で依頼することが重要です。弁護士を探す手段としては、インターネットで検索する方法や知人に紹介してもらうという手段がありますが、その事件の分野を専門的に扱っているかどうかを確認することが重要です。民事系を得意とする弁護士に依頼しても、良い成果が得られない可能性が高いです。
また、逮捕されたのが友人や知人であれば、弁護士の手配まで出過ぎた真似になる可能性があります。とりあえずは留置場に身柄を拘束されているはずの本人に面会へ行きましょう。
起訴までの流れ
刑事手続きは次のように進んでいきます。
①捜査の開始
職務質問や被害届、通報、告訴・告発などをきっかけとして警察は捜査を開始し、被疑者(俗にいう容疑者)を特定していきます。
②逮捕及び検察送致
警察は被疑者を特定した後、一定の段階で逮捕し、身柄を拘束します(ただし、最後まで逮捕されない事件もあります)。
被疑者を逮捕した場合、取り調べを経て、警察は被疑者の身柄や事件の関係書類、証拠等を検察庁に送り、送致を受けた検察官は取り調べを行います。
この取調べ期間中は、担当弁護士以外は面会できませんが、必要なものは差入れすることができます。
身柄を拘束しておく必要があると判断した場合、検察官は裁判所に対し勾留請求(引き続き身柄を拘束する請求)を行い、必要ないと判断した場合は釈放されます。
③勾留・勾留期間の延長
勾留請求がされると、裁判官が被疑者に対し質問を行い、勾留するかどうかを決めます。勾留の必要があると判断した場合は、原則として勾留請求がなされた日から10日間の範囲で勾留され、必要ないと判断した場合は釈放されます。
勾留期間中は拘置所や警察の留置施設に身柄を拘束され、取り調べが行われることになります。この期間中は原則、家族や友人でも面会することができますが、面会不可と判断されたときは被疑者と面会することはできません(接見禁止)。
なお、必要に応じて検察官・裁判官の判断で勾留期間の延長をすることができます。
④処分の決定
検察官は、勾留期間中に被疑者の処分(起訴(公判請求・略式起訴)・不起訴・処分保留)を決めます。
起訴されなければ釈放され、たとえ起訴されたとしても略式起訴の場合は罰金を納めれば事件は終了します。
公判請求を受け、法廷が開かれるのを待つ間、被告人(起訴された者をいい、被疑者から名称変化)はなお勾留され続けますが、保釈請求をし、許可が下りれば保釈金を納付することにより身柄の拘束が解かれます。
起訴後の流れ
起訴後の流れは以下のようになります。
①起訴
起訴にするか不起訴にするかの判断は、検察官にしか行えません(起訴便宜主義)。
検察官が起訴を決定した場合、起訴状という書類を裁判所に提出し、被疑者本人にも起訴状が届くことになります。起訴された時点で、「被疑者」という呼び名は変わり、被告人という呼び方をすることになります。起訴後は、裁判所が裁判の日時を決め、その連絡が来ますので、その日時に裁判所で刑事裁判を受けることになります。もちろん、欠席は許されません。
②公判
公判とは、刑事裁判において裁判所で裁判を行うことをいいます(民事裁判では「第1回弁論」という言い方をしており、「公判」という言葉は使いません)。
第1回公判、つまり1回目の裁判は、通常、起訴から約1か月後に行われます。公判には、被告人が出席するのはもちろんのこと、裁判官、弁護人と検察官も出席します。そこで、裁判となっている事件について、審理を進めることになります。
公判手続きは、(1)冒頭手続き、(2)証拠調べ手続き、(3)弁論手続きの順に進められます。(1)では、起訴状の朗読、黙秘権等の告知、罪状認否などが行われ、(2)では、検察官の冒頭陳述、取調の請求、証拠決定、証拠調べの実施が行われます。そして(3)で、検察官の論告求刑、弁護人による弁論、被告人の最終陳述を経て、判決が出されます。
このように数々の手続きを済まさなければ判決が出されないのですが、実際どれほど公判を行うのでしょうか。
ニュースでは、よく第5回公判や第10回公判という話を聞きますし、1年も2年も公判が続いているような印象もあると思いますが、実際の刑事裁判では、1回目の公判でほぼ終了する事件が多いようです。
第1回公判で審理がすべて終了し、その次の公判で判決を言い渡して事件が終結、というのがむしろスタンダードといえます。そのため、少し長引いても、2,3回で終結という事件が大半でしょう。そうすると、起訴から2,3か月以内には、判決が決まっていることになります。
しかも、第1回公判は、だいたい1時間以内で終了します。判決の言い渡しは5分もかかりませんので、多くの事件は、裁判全体で1時間もしないで終わっています。そのため、裁判というのは意外とあっさり終わってしまうのです。
しかし、逆にいえば、この短い時間で言いたいことをすべて裁判所に伝えなければなりませんので、それだけ事前の準備や、公判の場での活動が重要になってくるのです。
③判決
審理がすべて終了すると、判決を言い渡す公判を開きます。
判決の際には、結論(有罪か無罪か、有罪のときはどのような刑を与えるか)とそのような結論に至った理由が付されます。有罪判決には、大きく実刑判決と執行猶予判決に分かれ、実刑判決を下されると時期を置いて刑が執行されます。一方、執行猶予判決が下されるとその直後に釈放されることになりますが、一定の期間内に再度、禁固以上の犯罪を行ってしまうと執行猶予が取り消され、前の犯罪の刑罰を加重して刑罰が下されます。一定の期間を過ぎれば、前の刑罰を加重されることはありません。
④控訴・上告
判決の結論に不満がある場合には、高等裁判所に控訴することができます(通常、刑事裁判は簡易裁判所か地方裁判所で行い、その大半は地方裁判所で行います)。
「本当は無実なのに有罪判決を受けた」や「執行猶予をつけるべきなのに実刑判決だった」、などの理由で控訴を行うことができます。
また、控訴を行ってもなお、高等裁判所での判決にも不満がある場合には、最高裁判所に上告をすることもできます。しかし、実際には上告できる場合は非常に限定されており、上告が認められることはほとんどありません。控訴や上告をしないか、上告が退けられた場合には、その判決が確定し、争うことはできなくなります(なお例外あり)。
⑤刑の執行
有罪判決が確定した場合には、裁判所が命じた刑の執行を受けることになります。また、裁判に関する費用の支払いを命じられることもあります。
刑の執行を終えた段階で、刑事手続きは終了といえるでしょう。
まとめ
身近な人が逮捕されたら突然の出来事で、今後どうなってしまうのか、自分はどうすればいいのかと不安になってしまうことでしょう。しかし、逮捕された方は、それ以上に不安に感じています。
そんな時に被疑者の唯一の味方になってくれるのが刑事弁護士です。早期に依頼することで、少しでも被疑者の刑を軽くしたり、釈放の手伝いをしたり、前科を免れたり、できることはまだまだ残されています。周りの者が焦らず、冷静に動くことで、被疑者の立場がよくなることもあります。
あなたの身近な人を守るためにも、ご家族やご友人が逮捕されたらお早めに弁護士にご相談ください。