無実の罪で逮捕され、「お前がやったのだろう」と捜査機関から罵倒され、裁判にかけられた挙句、有罪判決を受け、刑罰を科されてしまうという冤罪事件。
もし、死刑判決を下された場合には、死の恐怖と向き合うという極限状況下に置かれることになりかねませんし、たとえ痴漢冤罪による逮捕であっても、会社を解雇されたり、家庭が崩壊したり、とこれまで築き上げてきた生活が大きく変わってしまうかもしれません。
そのような冤罪事件の当事者として巻き込まれてしまった場合、無実の罪を晴らすためにどうしたらよいのでしょうか。ここでは、冤罪事件に巻き込まれたときの対処法についてご説明します。
目次
そもそも冤罪事件とは?
冤罪事件に巻き込まれたときの対処方法を考えるうえで、まず、冤罪事件が発生するメカニズムを理解しておかなくてはなりません。
冤罪とは、「無実であるのに犯罪者として扱われてしまうこと」、 つまり「濡れ衣を着せられる」ということです。
冤罪が生まれる根本的な問題は、被疑者自身が罪を認める「自白」が証拠として偏重されていることです。証拠には、物的証拠(例えば、殺人事件で凶器として用いられたナイフなど)もあれば、他人による目撃証言もあります。
しかし、伝統的に日本の刑事裁判では、本人が認めたことを重く見て、それを信用する傾向にあります(もっとも、証拠が自白のみである場合は起訴できません)。
捜査機関も何とか口を割らせようとして、威圧的な取り調べを行うのはしばしば見られる光景であり、ときには違法・不当な取り調べが行われてしまうこともあります。
また、被疑者はそうした過酷な取り調べや長期間の拘束に耐えきれず、やっていないのに「やりました」と認めてしまうこともあります。もちろん、多くの被疑者は「とりあえず認めて、裁判になってから無罪を証明すればいい」と考えて、やっていないことを「やった」と認めるわけですが、実際にはこの「自白」を裁判の中で撤回するのは著しく困難です。
たとえ自白をしていなくても、誤った証拠や捜査過程のミスから冤罪が発生するケースもあります。わざと犯人に仕立て上げるならまだしも、目撃者や捜査を行う者も人間ですから、どれだけ注意を尽くしても、このような人為的なミスにより冤罪が発生する危険性をなくすことはできません。
冤罪事件に巻き込まれた場合の対処方法
このように、冤罪が発生する原因は捜査側に問題があるとも言えますが、疑われる側にも冤罪を防ぐ方法があります。
虚偽の自白はしない
まず、どれだけ厳しい取調べが行われたとしても、絶対に虚偽の自白をしてはならないということです。前述したように、一度してしまった「自白」を撤回することはかなり困難で、「裁判になったら真実を証明してみせる」と意気込んでいても、ほとんど不可能といってよいでしょう。
「自分がやりました」と言わなければ、裁判においても無罪になる可能性が少なからずありますし、そもそも確実な証拠がないということから起訴されない可能性もあります。
安易に調書にはサインをしない
また、捜査機関が作成する調書にサインをしないということです。
調書は、被害者や目撃者、被疑者などの話をもとに作成されますが、捜査機関がその話を自分たちの都合のいいように解釈してアレンジする可能性もあります。
そして調書にサインしてしまったら「真実」として扱われるので、後から違うと言っても通用しません。サインをする前に捜査機関から調書の読み聞かせがあるので、内容に違う点がある場合は訂正を申し出る必要があります。
冤罪で逮捕された場合は弁護士に連絡するべき?
とはいえ、上記のことを捜査のプロを相手に自分一人で乗り切るのはかなり困難です。そのため、冤罪事件に巻き込まれた際は速やかに弁護士を呼びましょう。
弁護士に依頼したならば、取調べの際にどのように受け答えすればいいかのアドバイスをしてもらえますし、捜査機関に無実である証拠を提示して不起訴になる場合もあります。何より、過酷な取り調べが続いている間も、大きな心の支えとなってくれるでしょう。
このように、速やかに弁護士に依頼することが、冤罪を防ぐ一番現実的な方法といえます。
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社会への復帰が困難になる場合がある
例えば、痴漢冤罪の場合を想像してみてください。
痴漢冤罪の被害に遭ってしまった場合、たとえ無罪判決を得たとしても、「痴漢を疑われる人」などのレッテルが貼られてしまった時点で、社会的地位や信頼性を失うことがあります。日本には、「何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される」という推定無罪の原則はありますが、それは理論上のものであって、実生活ではその原則通りにはいきません。
これまで築き上げてきたものが一気に崩れ、周りの者からは白い目で見られる恐れが十分にあるのです。
名誉を著しく傷つけられたとして、痴漢被害として告発した側に対し、損害賠償請求をしたところで敗訴してしまうことが多いのが実情です。勝訴しても精神的苦痛による慰謝料が認められるかは難しく、結局、得られた賠償額はごく少額であり、裁判費用の多くは取り返すことは出来ないことが多々あります。
その一方、痴漢被害として告発した側は勘違いで済まされることが多く、社会的や私生活に受ける被害は小さい、あるいはノーリスクの場合が大概です。
まとめ
以上のように、冤罪に巻き込まれてしまった場合、自分一人の力で解決しようとするのではなく、早い段階から弁護士を呼んで、冤罪とならないように努めることが大切です。
少し間違った判断をしてしまえば、残りの人生をすべて棒に振ってしまう恐れもあります。自分一人で悩まず、弁護士と一緒に解決していくことをおすすめします。