刑事事件においては、弁護士に依頼することが必要となります。
私選弁護人に依頼しない場合には国選弁護人についてもらうこととなりますが、ここでは、刑事事件を起こしてしまった際、弁護士に依頼することのメリットをご紹介します。
目次
弁護士に依頼するメリット
弁護士に刑事弁護を依頼するメリットとして以下のようなものがあります。
①弁護士であれば逮捕・勾留など段階問わずいつでも接見(面会)することができる
被疑者の身体拘束は、逮捕に引き続き、「勾留」という手続が控えています。
逮捕直後、検察官の勾留請求に対して許可が下りるまでは、被疑者は外部の者と会うことはできません。また、勾留の決定が出た後でも、裁判所が被疑者と外部との接触を禁止する場合(接見等禁止)があります。これは、被疑者との面会を許すことで、証拠隠滅を指示される恐れがあるためです。このような場合、たとえ身内の者であっても、被疑者と会うことはできません。
もっとも、この場合でも、弁護士は特別に被疑者と接見することができます。
刑事事件の対応は、初期対応が極めて重要です。逮捕直後から被疑者と接見することで、被疑者の立場、今後の見通し、方針を決定することが可能になります。
②大きな心の支えとなる
逮捕されて取り調べを受けている間は家族であっても接見することはできず、プロである警察官・検察官による取り調べに一人で耐える必要があります。また、逮捕されたことによりパニックになってしまったり、孤独感・絶望感などから警察官による誘導に迎合してしまい、やってもいないことをやったかのように説明してしまったり、本来やってしまったことを大きく誇張して説明してしまったりするなどの危険性が非常に高い時期でもあります。
弁護士は、逮捕段階から接見することができ、このような不安と孤独感に苛まれている方と接見し、的確な助言を行って精神的な支えとなる存在です。早期解決も然ることながら、精神的なサポートを得られるのも弁護士に依頼する大きなメリットといえるでしょう。
③捜査機関による取調べに対して、受け答えのアドバイスがもらえる
被疑者・被告人には、「話したくないことは話さなくてよい」という黙秘権が保障されています。しかし、捜査機関の取調べでは、丁寧に黙秘権の意味を教えてくれない場合がありますし、ちょっとした発言が別の意味として解釈されたり、被疑者に有利になるような内容から話していくうちに誘導尋問になったりするような事があります。誤解が誤解を生み、思ってもみなかった罪に問われる事態に発展する場合もあります。
そうならないよう弁護士との接見の際に、どのように答えたらよいか、あるいはどのようなことは黙っていたら良いかについてアドバイスをもらうようにしましょう。これにより、取調べの時でも落ち着いて受け答えすることができ、予想外の事態にならずに済むかもしれません。
④身柄解放に向けた活動することができる
刑事手続きは、ひとたび身体が拘束がされると裁判が終わるまで身柄が解放されない、というわけではありません。
被疑者が勾留されるまでには、検察官の勾留請求とそれに対する裁判官の勾留決定という手続きがあります。検察官や裁判官に対し、勾留の必要性がないと訴えることで、身柄が解放される場合もあります。また、裁判官の勾留決定に対して、異議を申し立てる(準抗告)方法もあります。準抗告が認められれば、被疑者の身柄は解放されます。
さらに、起訴された場合には、保釈請求をすることができます。保釈とは、勾留の効力が続いていることを前提に、保釈金の納付を条件に身柄が解放される裁判所の決定・手続きをいいます。
しかし、これらの身柄解放活動は、被疑者・被告人自身で行うことが著しく困難です。弁護人が活動することで初めて、これらの手続に実効性があると言えるでしょう。
⑤早期に事件を解決することができる
暴力事件や財産事件など被害者がいる犯罪の場合、被害者の処罰感情が最終的な処分に影響することがあります。そのため、被害者に対して謝罪をし、示談交渉をすることが重要です。
しかし、被疑者・被告人自身が示談交渉をしようとしても、警察や検察官は、被害者の連絡先を教えてくれることはほとんどありません。他方で、弁護士から申し入れをする場合、被害者の同意が得られれば、被害者の連絡先を教えてもらえるケースも多いです。
示談交渉が功を奏して、被害者が許してくれたり、被害届を取り下げてくれたり、被害弁償金を受け取ってくれたりすることは、被疑者の処分にプラスの影響を与えるものになり得ます。また、早期に弁護士へ依頼をしていれば、それだけ示談交渉を行う時間的猶予もできますから、早期の依頼のほうがメリットが大きいと言えます。
弁護士に依頼するデメリット
弁護士に依頼する場合には、弁護士費用が掛かります。この費用が掛かるという点が、ほとんど唯一のデメリットといえるでしょう。
私選弁護人を依頼する場合、各法律事務所の定める費用を支払う必要があります。
現在、弁護士の費用は、各弁護士が自由に定めることができ、問われている犯罪の内容や数、否認事件か否か等で報酬は大きく異なってきます。ホームページ等で費用を公開している事務所も多いですから、確認してみるとよいでしょう。
逮捕・勾留されて長期間留置所から出られなかったり、前科がついてしまったり、刑事手続き上、多くの不利益があるのも事実です。これらの不利益を被る可能性と比較して、弁護士費用を判断するのが良いでしょう。
早めに弁護士を見つけることが大切?
刑事事件で弁護士に依頼する際、内容や捜査の進み具合など事件によって様々なので、一概に「このタイミングで依頼した方がいい」ということはできませんが、どの事件に対しても言えることは、「早めに依頼するに越したことがない」ということです。
逮捕から勾留までは72時間以内、勾留から起訴までは最大20日と期間が決まっており、こちらが弁護士に依頼するべきかどうかと悩んでいるうちにも、手続きは進んでいきます。脅すつもりはありませんが、「今」弁護士に相談するのと、「3日後」に弁護士に相談するのでは、結果が全く変わってくることもあります。
勤務先への連絡、被害者との示談交渉、取り調べ中の受け答えのアドバイスなど、担当弁護士にしかできないこともあります。早い段階から弁護士に依頼することで、事件を迅速かつ最小限に解決することも期待でき、今後の生活にも大きな影響をもたらすことでしょう。
そのため、「刑事事件を起こしてしまった」と自覚した時や、逮捕された直後など早い段階から弁護士を見つけて依頼することが重要です。
弁護士であれば誰でも良い?
弁護士も人ですから、あらゆる分野の法律に精通しているわけではなく、分野によって得意・不得意があります。そのため、知人から「この弁護士は腕がいいから」と弁護士を紹介されたとしても、刑事事件を得意としていなければ一度考え直した方がいいでしょう。
また、刑事事件での弁護活動はスピードが重要ですので、刑事事件専門で良い弁護士と思っていても、すぐさま予定が調整できないようでしたら、すぐに切り替えて別の弁護士を選びましょう。
近年、刑事事件をとりまく状況は非常に大きく変わりつつあり、必要な弁護活動も数年前とは様変わりしています。 刑事事件を日常的に取り扱い、最新の知識と経験を積んでいる弁護士でなければ、十分な弁護活動を行うことは難しいといえるでしょう。
そのため、法律だけでなく、警察の捜査や考え方をよく知り、刑事裁判での高い弁護技術を持った弁護士に依頼する必要があります。
まとめ
以上のように、刑事事件を弁護士に依頼するメリットには様々なものがあります。
もっとも、弁護士選びに失敗すると、そのようなメリットが生かされない場合もあるのが事実です。「ネットの検索数が多かったから」「知人にいい弁護士だと紹介されたから」など思慮の欠いた理由で選ばないようにしましょう。